【フローラとマックス】愛すべきクソババアになるために

愛すべきクソババアになるために

フローラは、野蛮で下品だ。なのになぜか愛しい。

周囲から母親像を押し付けられても、それを自分の中には落とし込まないのが彼女の強さだと思う。ときどき自己嫌悪になりながらも、やっぱり絶対に自分自身でいることを手放さない。手放せないのだ。

最後、家族が3人揃って歌うシーンがある。フローラが歌った歌詞に、こんなフレーズがあった。

「私は嫌な女、君のクソババア」

この台詞にしびれた。不覚にも号泣した。
ここで、こういう泣かせ方をするのか。

私はなにを悩んでいたんだろう。

息子にクソババアと言われても言われなくても、私はきっとクソババアになるのだ。きっと彼女とは違う種類の。

上等じゃないか。

私はいい母親を目指すのではなく、ただクソババアな自分を受け止める強さと、クソババアと言われてもクソババアで居続ける潔さを身につけた方が、きっといい。クソババアに怯えるのはもう辞めよう。私なりの、愛すべきクソババアになるために。

──

■フローラとマックス(原題:Flora and Son)
監督:ジョン・カーニー
脚本:ジョン・カーニー
キャスティング:エイミー・ローワン
オリジナルソング&音楽:ゲイリー・クラーク、ジョン・カーニー
衣装:トリオナ・リリス
編集:スティーヴン・オコンネル
プロダクション・デザイン:アシュリー・ジェファーズ
出演:イブ・ヒューソン、ジャック・レイナー、オーレン・キンラン、ジョセフ・ゴードン=レビットほか
配信:Apple TV+
公式サイト:https://tv.apple.com/jp/movie/%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%81%A8%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/umc.cmc.1ol2idv8q2iftiyjfkuyfki5l

(イラスト:水彩作家yukko

1 2 3 4
S H A R E
  • URLをコピーしました!

text by

フリーライター、エッセイスト、Web編集者、ときどき広報。沖縄に10年くらい住んでます。読書と短歌と育児が趣味。