【フローラとマックス】愛すべきクソババアになるために

osanai フローラとマックス

ティーンエージャーの息子マックスの反抗期に悩む、夫と別居中のフローラ。息子の非行を更生するには趣味が必要だと考え、ゴミ収集車で見つけたギターを彼に贈ろうとするが──。
監督は「はじまりのうた」「シング・ストリート 未来へのうた」のジョン・カーニー。Apple TV+で2023年9月29日から配信中。

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私には1歳の息子がいる。

いつだって「ママがいい」という態度で接してくれる息子に日々ときめきながら、心の奥にはいつだって不安がある。

いつかクソババアと呼ばれる日がくるのか、と。

だから反抗期真っ只中の息子と母親を描いた本作品を、私は心構えのつもりで観ようと思っていた。

泣いちゃうかもなぁ、いや、泣いちゃうんだろうな。なんて思っていたから、映画の中盤くらいまで終始ポカンとしてしまった。共感対象であるはずの母親フローラの行動一つひとつが、衝撃的だったのだ。

衝撃的な母親

物語は、露出たっぷりの女性がクラブで踊り狂うところからはじまる。ショットグラスを一気飲みし、一心不乱に踊り狂い、狙った男に相手にされず、明らかにやりたいだけの男と踊ることにし、その男と記憶なく寝てしまう。どこにでもいる「ビッチ」である。

もしかしてこの夜がきっかけで妊娠しちゃったって話?と思いきや、すでにティーンエイジャーの息子をもつ母親のワンシーンだった。まじかよ。

息子のマックスは知っている。母親が性的に奔放な日々を送っていることを。マックスは思春期真っ只中だ。当たり前だがグレている。ちょっとした窃盗が止められず、「次やったら収監だ」と何度も警告を受けていた。(この母親にしては全然ましなグレ方だと思うけれど…)

自分の素行はさておき、マックスの非行を心配するフローラ。ある日仕事の帰り道、ゴミ収集車に積まれたギターを発見し、息子にプレゼントしようと思い立つ。音楽でもやれば息子の非行がマシになると思ったのだろう。思い立ったら即行動。収集車からギターを盗み、修理に出してリボンをつけ、息子にプレゼントした。もはやギャグである。マックスはすぐに盗品だと見抜いていた。

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S H A R E
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フリーライター、エッセイスト、Web編集者、ときどき広報。沖縄に10年くらい住んでます。読書と短歌と育児が趣味。