【ソウルメイト】怖いほど、あなたを愛してる

osanai ソウルメイト

韓国・済州島の小学校で出会ったミソとハウン。性格も価値観も育ってきた環境も違うふたり。ある日、大人になったミソは、絵画の公募展で大賞に選ばれたハウンの行方について問われるのだが──。
監督は「短い記憶」で脚光を浴びたミン・ヨングン。主人公ミソを演じるのは「梨泰院クラス」「The Witch/魔女」のキム・ダミ。本作のオリジナルは、2016年の中国・香港映画の「ソウルメイト/七月安生」。

──

平日、夜の映画館。2階席最前列の椅子に深く座り、映画が始まるのを静かに待つ。

「ソウルメイト」。元々は2016年に中国・香港合作で制作され、韓国で2023年にリメイクされたその映画のタイトルを頭の中で反芻する。私には、ソウルメイトはいるだろうか。どの程度の仲だったらソウルメイトと呼べるのだろう。そんなことをぼんやりと考えているうちに、物語が始まった。

韓国・済州島で暮らす少女ハウンと、ハウンの学校に転校してきたミソ。ミソの母親は男を拠り所に転居を繰り返し、ミソも度重なる転校を余儀なくされていた。転校初日から教室から脱走したミソに、ハウンは目を丸くする。

ひょんなことをきっかけに、次第に距離を縮めていく2人。絵が好きという共通点はあっても、目に映らないものを自由に描き出すミソと、目に映るものをひたすら忠実に描くハウン。2人はあまりにも違う。ブラジャーの機能や意味もよくわからず、親に言われるままそれを身にまとうハウンを前に、その圧迫感に辟易し「大人になってもこんなものはつけない」と宣言するミソ。こんなにも違う「あなた」の存在が、ただひたすらにまぶしく、愛しいと思える。

まだ初潮も迎えていない、「女」になる前の、「女」として生きるとはどういうことかすら知らずに、自由で勇敢だった頃の「私たち」がそこにいた。

やがてミソの母親は島を出ていく。一方のミソは、ハウンと共に島に残り、2人は成長する。17歳。相変わらず自由奔放なミソと、大人しい優等生タイプのハウン。「ピカソ気取り」と教師に揶揄されるミソの絵。歳月と共に写実性に磨きのかかるハウンのスケッチ。背も手足も若木のように健やかに伸び、爽やかな色香すら漂わせる年頃になっても、相変わらず2人で1人のようなミソとハウン。彼女たちの表情ひとつひとつがみずみずしく、まぶしい。

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S H A R E
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随筆家。徒然なるままに徒然なることを。本・旅・猫・日本酒・文化人類学(観光/災害/ダークツーリズム)などなど。