【カムイのうた】簒奪者の子孫が語るには

osanai カムイのうた

女学校への進学を希望したテルだが、優秀な成績にも関わらず「出自がアイヌである」というだけで不合格になる。その後も理不尽な差別といじめを受ける彼女だが、アイヌ語研究者の兼田に出会ったことで人生の転機を迎える。
監督・脚本は菅原浩志、主演は吉田美月喜。本作の主人公テルは、『アイヌ神謡集』を著した知里幸恵をモデルにしている。

──

「カムイのうた」は、今から100年前に19歳で亡くなったアイヌの女性、知里幸恵(1903-1922)の人生をもとに作られた作品である。知里は、文字を持たないアイヌに口伝えで伝承されてきた叙事詩(ユーカラ)を初めて日本語に翻訳し、『アイヌ神謡集』として出版、アイヌ伝統文化の復権に貢献した人物として知られている。

本作品の主人公、北里テルは学業優秀であったため女学校への進学を目指すが「アイヌだから」という理由で入学を拒否される。代わりに、女子職業学校に入学するものの、学内にアイヌはテルしかおらず、理不尽な差別といじめを受けることになる。

ある日、東京からアイヌ語研究の第一人者である兼田教授がテルの伯母イヌイェマツを訪ねてくる。アイヌが口述で語り継いでいるユーカラの聞き取り調査にやってきた兼田の熱意に強く心を打たれたテルは、兼田の勧めもあり、ユーカラを文字で残す作業に没頭していく。

アイヌ語と日本語のバイリンガルであるテルの翻訳は高く評価され、兼田から東京で本格的に翻訳に取り組まないかと誘われる。足が不自由な伯母と、幼馴染で恋仲だったアイヌの青年・一三四と離れることに迷いを感じながらも、アイヌ民族の地位向上のためにテルは東京に行くことを決心する。

東京につき、兼田の自邸で居候しながら、ユーカラの翻訳に精力的に取り組むテルだったが、慣れない内地の環境もあり、体調を崩して倒れてしまう。医者の診察を受けた結果、重度の心臓病であることが判明する。医師から心臓に負担にかかる出産が禁止されたため、テルは残してきた恋人とは縁を切らざるを得なくなる。身体への負荷が大きい鉄道の利用も難しく、北海道に帰ることもできない。

覚悟を決めたテルは東京で翻訳に取り組む暮らしを続け、ついに翻訳の出版が決定する。しかし、同じタイミングで心臓病が悪化し、テルは東京で亡くなってしまう。

*

※民族と国籍は別物であるため、以降は日本国籍を持つ人を「日本人」、日本語を母語とする文化を持つ民族のことを「和人」と呼ぶことにする

1 2 3 4 5
S H A R E
  • URLをコピーしました!

text by

1984年生まれ。兼業主夫。小学校と保育園に行かない2人の息子と暮らしながら、個人事業主として「法人向け業務支援」と「個人向け生活支援」という2つの事業をやってます。誰か仕事をください!