【カムイのうた】簒奪者の子孫が語るには

光が消えるその前に

2019年「アイヌ施策推進法」(略称)の中で、日本政府はアイヌ民族を「先住民族」と規定した。

先住民族とは、「一地域に、歴史的に国家の統治が及ぶ前から、国家を構成する多数民族と異なる文化とアイデンティティを持つ民族として居住し、その後、その意に関わらずこの多数民族の支配を受けながらも、なお独自の文化とアイデンティティを喪失することなく同地域に居住している民族」のことを指す(『アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会報告書』(2009年))。

2020年7月には北海道の白老町に「国立アイヌ民族博物館」が開設され、2024年1月には映画「ゴールデンカムイ」(*1)が公開されており、アイヌ民族やその文化への接点は増えてきている。

一方で、現在北海道に居住しているアイヌの数は確認されているだけで、5,571世帯、13,118人しかいないのが現状だ(平成29年 北海道アイヌ生活実態調査報告書)。また、アイヌ語はUNESCO(国連教育科学文化機関)の「消滅の危機にある言語・方言」リストの中で、最も危険度の高い「極めて深刻」に認定されており、絶滅が危惧されている。

和人の社会がアイヌに向き合う前に、アイヌ民族や文化の光は見えなくなってしまうかもしれない。それを時代の流れという簡単な言葉で片付けたくない。できることはないのかもしれないけど、何も知らないままでいていいわけがない。

この作品には欠落があると書いた。一方で、僕とアイヌとを結びつける接点になったのも事実だ。だから、一人でも多くの人に届いてほしい。そして、和人である自分とアイヌについて考える機会を持ってほしい。その先にしか、社会の変化はないのだから。

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■カムイのうた
監督:菅原浩志
脚本:菅原浩志
プロデューサー:作間清子
撮影:上野彰吾
美術:長寿恵
編集:時任賢三
助監督:桑原昌英
主題歌:島田歌穂「カムイのうた」
出演:吉田美月喜、望月歩、島田歌穂、清水美砂、加藤雅也ほか
配給:トリプルアップ
公式サイト:https://kamuinouta.jp/

*1:日露戦争直後の北海道を舞台にした冒険活劇漫画。『週刊ヤングジャンプ』にて2014年から連載中。帰還兵である杉元佐一やアイヌの少女アシリパを中心に、バラエティに富んだ登場人物たちが金塊をめぐって争奪戦を繰り広げる。コミックスは最新刊まで2,700万部を突破している。

(イラスト:水彩作家yukko

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1984年生まれ。兼業主夫。小学校と保育園に行かない2人の息子と暮らしながら、個人事業主として「法人向け業務支援」と「個人向け生活支援」という2つの事業をやってます。誰か仕事をください!