【バビロン】自分にとっての「映画」とは何か?デイミアン・チャゼルが魅せるハリウッド黄金期と夢の行方

私たちが観ている「バビロン」も同じだ。様々な技術の歴史が重なり合い、音が付き、色が付き、観客の目や耳に触れることで、この世に生み出された作品の一つとなり、映画業界の一部に溶け込んでいくだろう。映画史に名を刻むことを象徴、証明しているかのように。

このシーンとそれを観る観客(受け手)の存在により、チャゼルが思う「映画」とは何か?の答えが、映画を通じて表現されていた。

ジャスティン・ハーウィッツの音楽にも、「映画の歴史のかけら」が隠されている。

本作の劇中で流れていた「マニーとネリーのテーマ」。これは「ラ・ラ・ランド」の「ミアとセバスチャンのテーマ」にも通ずる楽曲だ。「似ているシーンだから」という理由以上に、チャゼルの映画表現におけるこだわりが凝縮されているように私は感じた。

現代の映画業界ができあがるまでの歴史を、チャゼルを始めとするスタッフとキャストの手によって、「バビロン」という一つの作品に作り上げ、世に送り出されていった。

言うまでもなく、人々の目や耳に触れることで、初めて「映画」として歴史に刻まれる。

劇場で観ていた自分自身も、映画の歴史の一部を体験している最中だとハッとしたときには既に、勝手に涙が溢れ出ていた。

私にとって大きな意味を持つ映画体験であり、大きな「感情のアップデート」となった。

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■バビロン(原題:Babylon)
監督:デイミアン・チャゼル
脚本:デイミアン・チャゼル
プロデューサー:マーク・プラット、マシュー・プルーフ、オリヴィア・ハミルトン
製作総指揮:マイケル・ビューグ、トビー・マグワイア、ウィク・ゴッドフリー、ヘレン・エスタブルック、アダム・シーゲル
撮影監督:リヌス・サンドグレン
衣装デザイナー:メアリー・ゾフレス
プロダクション・デザイナー:フロレンシア・マーティン
編集:トム・クロス
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
メイクアップ部門責任者:ヘバ・トリスドッティル
ヘア部門責任者:ジェイミー・リー=マッキントッシュ
スーパーバイジング・サウンド・エディター:アイリン・リー、ミルドレッド・イアットルー・モーガン
出演:ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ、ジーン・スマート、ジョヴァン・アデポ、リー・ジュン・リー、トビー・マグワイアほか
配給:東和ピクチャーズ

(イラスト:Yuri Sung Illustration

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アパレル業界出身のシステムエンジニア。オンラインコミュニティ「Beauty Ritual」運営。恋愛映画がすきだけど、オールジャンル鑑賞します。