【SHE SAID/シー・セッド その名を暴け】真実を語る声が、正しい変化をもたらす世の中であれ

性暴力被害者の身に起こる「凍りつき」現象と、「性的同意」の意味を正しく理解する必要性について

身内や知人から受ける性暴力のほとんどは、密室で起こる。信頼していたから部屋に入った。もしくは、断れない上下関係を利用された。いずれの場合でも、「部屋に入ったのだから(性行為に)同意していた」という社会的認識は未だ根深い。

しかし、性的同意とはそんなに軽いものではない。

上谷さくら氏と岸本学氏(両名共に弁護士)による共著『おとめ六法』には、はっきりとこう記してある。

二人でお酒を飲みに行ったとしても、それは性的行為の同意ではありません。男性の家にあがったからといって、性的行為を同意したことにはなりません。そこを都合よく解釈して無理に性的行為を行うことは、性暴力です。

(上谷さくら、岸本学(2020)『おとめ六法』KADOKAWAより引用)

現在は2023年。#MeToo運動開始から6年が経った今でも、性的同意の意味を正しく認識できていない人は、性別に関わらず多数存在する。

同じく「抵抗することが難しい」現実も、案外知られていない。

性犯罪に遭った際、多くの被害者は「凍りつき」という現象を起こす。これは、体のみならず思考までもが凍りつく現象のことで、被害者がかろうじて心を守ろうとするが故に起こる防衛本能である。それを「性的同意があった」と認識されたのでは、正直たまったものではない。

合意のない性行為は、たとえ夫婦間や恋人間であったとしても、全て性暴力である。「No」にはNoの意味しかないし、無理やり引き出した「Yes」は、合意とはまったく異なる。暴力や恫喝を用いずとも、性行為の強要は可能である。相手との関係性や、過去のトラウマを利用した性暴力は、卑劣かつ残忍な行為だ。

しかし、被害が起きた際、被害者ではなく加害者を守ろうとする組織も珍しくない。

なぜなら、そうやって事実を隠蔽した方が、組織は体面を保てるからだ。特に加害者が組織において力を持つ人物であった場合、その傾向は強くなる。ワインスタインが所属していた映画製作会社でも、まさに同じような隠蔽工作が行われていた。被害者の声は握りつぶされ、加害者であるワインスタインだけが守られ、職場を去るのも、大切なものを失うのも、被害者のみだった。

「性的同意」の正しい知識が広まれば、被害そのものが減らせる。また、性暴力被害者がどのような心理状況に陥るのかについて、警察が理解を深めることで、被害者が受けた苦痛は少なからず軽減できる。そのためにも、性犯罪における司法の在り方そのものを変えることは、急務である。

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S H A R E
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エッセイスト/ライター。PHPスペシャルにエッセイを寄稿。書評『ダ・ヴィンチWeb』|映画コラム『osanai』|連載『withnews』『BadCats Weekly』など多数|他、インタビュー記事・小説を執筆。書くことは呼吸をすること。海と珈琲と二人の息子を愛しています。