【アウシュヴィッツの生還者】戦争の「その後」に想いを馳せ続けること。

ドイツの強制収容所・アウシュビッツから生還したハリー。アメリカでボクサーとして生計を立てながらも、ポーランドで生き別れた恋人のレアを捜していた。自分の生存を知らせるために自身の「過去」の取材を打ち明けたハリーは、世間から注目を集めてしまう。
監督は「レインマン」のバリー・レヴィンソン。主演は「インフェルノ」のベン・フォスターが務めた。

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生まれたときからずっと、「戦争」に影響され続けている。そして現在進行形の「戦争」にも、振り回されている。日韓露ミックス・在日コリアン(帰化済みなので“元”だけど)に生まれついたぼくの人生に、「戦争」は影を落とし続けてきた。

もっともぼくはアラサーだし、日本で生まれて日本で育って日本に住んでいるから、リアルタイムかつ実際に戦争を経験してきたわけじゃない。ただそれでも、ぼくが受けてきた排斥と迫害、そしていま抱えている後ろめたさは、間違いなく戦争の「その後」なのだ。

しかしながら人びとは、「その後」についておそろしいほど無頓着である。映画「アウシュヴィッツの生還者」主人公ハリー・ハフトには、生き延びるためやむを得ず同じユダヤ人たちを殺害し続けてきた過去がある。本人の哀しみと裏腹に、市井の人たちはおろか、同胞たちさえも厳しい目を向ける。

1939年、ポーランド侵攻を経てポーランドはドイツに占領された。ベウハトゥフで暮らしていたハリーは、この街でレアという女性に恋をする。ハリーにとっての初恋であり、彼女はハリーの運命のひとだった。そのレアが、ある日ハリーの目の前でアウシュヴィッツに強制送還される。続いてハリーもまた収容されてしまい、愛し合う若いふたりは生き別れとなった。

“ヘルツコ、助けて*”

ハリーの鼓膜には、助けを求めるレアの叫びがこびりついてしまっている。ハリーはどんな手を使ってでも生き延びて、レアに再会することを心に誓うようになる。そしてとある方法で、1949年にアウシュヴィッツからの生還に成功した。

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S H A R E
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ライター。修士(学術)、ジェンダー論専攻。ノンバイナリー(they/them)/日韓露ミックス。教育虐待サバイバー。ヤケド注意の50℃な裸の心を書く。