2023年下半期 衰退する洋画興行と戦争に向き合う邦画

osanai 2023年下半期振り返り ぼのぼの

2023年下半期に公開された映画、およびそれを取り巻く状況には幾つかの顕著な特徴が見られた。それについて振り返りながら、個々の作品についても触れていきたい。

【外国映画】邦画>洋画の傾向が固定化

かつての洋高邦低とは打って変わり、2010年代に入る頃から邦高洋低の傾向が強まり、とりわけここ10年ほどで、それが確立した感がある。その理由については長くなるので触れないが、今年下半期は洋画の凋落が特に強く感じられた。

興行的に言うと、上半期に「ザ・スーパーマリオ・ブラザーズ・ムービー」(140億円(*1))の特大ヒットがあったが(とは言え、あの映画を「洋画」という認識で見た人は少ないのでは……)、下半期は「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」(53.8億円)が「『トップガン マーヴェリック』(137.1億円)に続く大ヒット」という期待からすると、やや勢いに欠ける数字。人気シリーズである「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」(37.9億円)や「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(25.8億円)、あるいはディズニーの実写版「リトル・マーメイド」(33.7億円)など、どれも数字だけ見れば立派なものだが、そのブランド力を考えると、どこか不完全燃焼を覚える。少なくとも社会現象化にはほど遠い状況だ。

結局 今年公開された作品で興行成績のトップテンに入っている洋画は「ザ・スーパーマリオ・ブラザーズ・ムービー」(堂々の第1位)と「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」(第5位)の2本だけ。かつての洋画全盛期を知る者には、まさに隔世の感がある。

夏休み以降の映画に絞るとさらに悲惨で、興行的に目立つのは「ホーンテッドマンション」(21.2億円)と「MEG ザ・モンスターズ2」(14.4億円)程度。アメリカでもコケた「マーベルズ」はともかく、一見ファンタジックな装いで男性優位社会を鋭く風刺した「バービー」が、世界中で記録的な大ヒットをしながら日本では7.3億円の興行成績しか上げられなかったのは、日本のマーケットの特殊性を考える上で重要だ。

そして下半期の洋画不振には、夏から始まったハリウッドの俳優組合/脚本家組合のストライキが大きく影響している。先述の「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」も、ストライキの影響でトム・クルーズの来日が中止になったのが、爆発的ヒットに至らなかった要因の1つだ。俳優がプロモーションに参加できないという理由から「デューン 砂の惑星PART2」などが公開延期された。

この大規模なストにより、数か月間ハリウッドの映画製作がストップし、スケジュールに大幅な仕切り直しを強いられたものも多い。つまり2024年から、おそらくは2025年の前半までハリウッド映画の大作が枯渇するということで、今年以上に「邦画>洋画」の固定化が激しく進むものと思われる。もはや外国の実写映画を特別なものとしてありがたがるのは、中高年以上と一部のマニアックな層……ということになりかねない。

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長年の映画ファン。ほぼ好き嫌い無くどんなジャンルも見ます。本業の半分くらいは書く仕事で、もっと書く場を増やしたいと思っています。写真を撮ることも大好きです。