2023年下半期 衰退する洋画興行と戦争に向き合う邦画

【日本映画】戦争がらみの作品ラッシュは偶然なのか?

下半期の日本映画の話題作を見ていくと、顕著に感じられるのは戦争、とりわけ太平洋戦争の影だ。

宮﨑駿久々の新作「君たちはどう生きるか」は太平洋戦争真っ最中の1943〜44年頃が舞台。直接的な戦争描写こそないものの、主人公の父親は軍需工場の社長であり、ファンタジー世界もさまざまな殺し合いに満ちていて、かなりオブラートに包まれているが、これが紛れもなく「戦争の時代の物語」であることを伝えている。

福田村事件」は関東大震災が起きた1923年の物語。直接的な戦争の時代でこそないが、日露戦争を経て1910年に日本が韓国を併合した歴史を無視して、この物語は理解できないし、在郷軍人会の人々が虐殺の立役者となったこともはっきり描かれている。その結果生じた朝鮮人差別、およびその裏返しとなる朝鮮人への恐怖が悲劇を生み出した。その差別と対立構造はさらに後の時代まで受け継がれ、敗戦というカタストロフを経てなお21世紀まで引き継がれている。

ゴジラ -1.0」は戦後の日本を舞台に、ゴジラとの戦いを通じて、主人公が戦争のトラウマを乗り越える物語。ただしこの作品の戦争に対するスタンスは非常に玉虫色で、それが国内での賛否両論につながっているのは間違いない。ちなみに筆者は「敗戦のトラウマを仮想敵のゴジラで晴らすマスターベーション物語」として否定的に見る立場だ。

」は、時代が違いすぎるので他の作品と同列に並べるべきではないが、やり過ぎなまでのゴア描写により、戦というのが「人体の破壊行為」そのものであることを明確に描いている。

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S H A R E
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長年の映画ファン。ほぼ好き嫌い無くどんなジャンルも見ます。本業の半分くらいは書く仕事で、もっと書く場を増やしたいと思っています。写真を撮ることも大好きです。