【ガール・ピクチャー】転んでも大丈夫。痛くたって、起き上がれる。

3人それぞれの痛みと成長

先ほど、彼女たち3人と私ではさまざまな境遇が違う、と書いたが、正確にはミンミ、ロンコ、エマの3人も、全然タイプの違う女の子だ。好みや性格、興味の対象、家庭環境など、異なる点のほうが多い。

ミンミは、クールでシニカル。一見、揺らがない自分をもっているように見えるし、3人の中ではいちばん大人びて見える。けれども実際は、本当の気持ちを上手に表現できない子だ。

本当はやさしくしたいのに、本当は甘えたいのに。つい反対の行動をとってしまう。恋人エマの目の前でほかの男の人を口説いたり、親友ロンコと大げんかしてバイト先のスムージースタンドをめちゃくちゃにしたり。挙句の果てに警察へ連れて行かれてしまった彼女が、涙をこぼしながら本音をもらすシーンは、苦しくて切なくて仕方がない。素直になるのって、簡単じゃない。

ロンコは、自分のことを「普通じゃない」と言う。男の子に近づいてみたいし、セックスにも興味がある。しかし、いざ、そういう場面になると、心や体が追いつかない。思い描いているような気持ちよさを感じられなかったり、緊張してムードを壊すようなことを口走ってしまったりして、そのたびに深く落ち込む。

性的欲求は一人ひとり異なるものだし、友だちと比較できるものでもない。普通も、普通じゃないもないのだ。でも、だからこそ難しい。程度の差こそあれ、ロンコのように、性に対して「わからない」というもどかしさに直面したことのある人は、少なくないだろう。私だって、その一人だ。

フィギュアスケーターのエマは、大切な試合の前にスランプにおちいり、得意としていたトリプル・ルッツが跳べなくなってしまう。そんななか、ミンミとの出会いが、スケート一色だった彼女の青春を大きく変える。ミンミに夢中になるあまり、次第にスケートの練習が疎かになっていくのだ。

運命の出会いは、成長の助けにも、障害にもなり得る。その強烈さゆえに、冷静でなんていられないし、正しい選択をするのも難しい。でも、エマは好きなものに対して、いつもまっすぐ。スケートのことも、ミンミのことも、心から愛しているのだ。愛をエネルギーに、どんどん強く美しくなっていくエマに、憧れてしまった。

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S H A R E
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東京在住。コピーライター。好きな映画は「ファミリー・ゲーム/双子の天使」「魔女の宅急便」。