生まれたときから顔の左側にアザがあった大学院生のアイコ。幼少期にアザをからかわれて消極的だった彼女が、映画監督・飛坂に出会い、恋人関係になったことで変化を遂げていく物語。
監督は「Dressing Up」で第25回日本映画プロフェッショナル大賞にて新人賞を受賞した安川有果。脚本は城定秀夫。松井玲奈が主人公のアイコを演じている。
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自己評価を0点にしてしまうほどの「いやな部分」
自分にも、自分の人生にも、ちっとも満足していない。すごく正直に言えば、自分のことはあまり好きじゃない。
いや、こんな暗いことを書くと、自分をもっと嫌いになりそうなので、きちんと正確に書くことにする。正確には、満足できるところや好きなところが、ひとつもないわけではない。しかし、いやだなと思う部分の存在が強すぎるのだ。「いやな部分」がある自分は、もうダメだ、0点だ。そう思えてしまい苦しくなることが、たびたびある。
自分の思考を冷静にコントロールできなくなり、自己評価を0点にしてしまうほどの「いやな部分」。それは、いわゆるコンプレックスである。実に厄介で強烈だ。
今回、鑑賞した「よだかの片想い」も、コンプレックスについて描かれた作品だった。本作は顔にアザがあり、ずっと内気だった大学院生のアイコが、ひとつの恋をきっかけに自分自身と向き合い、成長していく物語だ。
事前に公式サイトを見て気になったのは、「(not)HEROINE movies」の文字。本作は、「不器用に、でも一生懸命“いま”を生きるヒロインたち」を映画化するプロジェクト「(not) HEROINE movies」のうちの一作なのだそう。確かにアイコは、いつもキラキラと生きているような王道のヒロイン像とは異なる。コンプレックスに悩みもがく、「(ノット)ヒロイン」だ。
そういえば、映画「わたしは最悪。」の主人公・ユリヤも「自分の人生なのに脇役のような気がする」というようなことを言っていた。共感して、胸が苦しくなったことを思い出す。彼女もまた「(ノット)ヒロイン」だった。
王道ヒロインのようにはうまくいかない現実の私たちは、どう生きていけばいいのだろう?そんなことを考えながら、I列5番を購入した。