【正欲】マイノリティな人々、ではなく、たった一人のあなた

osanai 正欲

家庭環境、性的指向、容姿などそれぞれ異なる背景を持つ5人が、自分や他者との交流を通じて「つながる」ことの意味を見出していく。
朝井リョウの同名小説を「あゝ、荒野」「前科者」の岸善幸が監督として映画化。異なる背景を持つ5人を、稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香がぞれぞれ演じている。

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気がつけば、考えてしまうこと

自分で望んでいるわけではないのに、とある“テーマ”が自分のもとに近づいてきていると感じることがある。“テーマ”は、“問い”とも言い換えられる。

ここ最近は「他者」というテーマ。人からすすめられた映画、たまたま触れた本、身のまわりに起きたこと。決して意識的ではなく、偶然目の前に現れたコンテンツや物事に触れ、向き合っているうちに、気がつけば「他者」というテーマに帰結しているのだ。

本サイトosanaiでも「ケイコ 目を澄ませて」や「イニシェリン島の精霊」、「かかってこいよ世界」など、いくつかの映画作品で「他者」について考えてきた。それぞれの作品は、もちろんほかのテーマで語ることだってできたはずだが、私は「他者」ということばかりが頭に浮かんだ。

結局、他者とはなにか。理解できるのか。できないのか。すべきなのか。すべきではないのか。つながる、わかりあう、なんて可能なのか。その発生条件とは。その意味とは。

答えはまだ、出ていない。答えが見つかりそうだと思ったら、新たな視点によって過去の考えが簡単にくつがえされることも多い。もうしばらくは、もっと広く、もっと深く、もっとたくさんの視点から問い続けることになるのだろう。 そう思い巡らせていたころ、映画「正欲」の予告を観た。そこには「他者」という存在に悩む人たちが描かれているように感じた。「他者」というテーマに、新しい気づきを与えてくれそうな予感がする。それが希望なのか絶望なのかは、観てみないとわからない。好奇心と恐怖心。相反するふたつの感情が、からだの中でふつふつするのを感じながら、I列3番へと向かった。

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S H A R E
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東京在住。コピーライター。好きな映画は「ファミリー・ゲーム/双子の天使」「魔女の宅急便」。