2023年5月14日、長野県富士見町のコミュニティ・プラザで、映画上映会を開催した。
僕にとって初めて企画した映画上映会で、2022年に公開されたフランス映画「アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台」を取り上げた。
有志を募って開催に至ったのだが、グループ名を「いい映画プロジェクト」とした。命名した当初は「これしかない!」と思ったものだが、そもそも「『いい映画』とは何か?」が分かりづらい。コピーライティングの大家なら、やり直しを命じられてしまうだろう。
あまり良い問いではないけれど、「いい映画」について言葉を尽くしてみたい。2023年6月30日。ちょうど2023年の上半期が終わるタイミングなので、ここ半年間で観た映画(映像作品)についても振り返りながら。
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まずは「対峙」(監督:フラン・クランツ)。
高校銃乱射事件の被害者家族と加害者家族による対話を描いた作品だ。高校生が、同じ高校生を射殺する。犯人自らも自死を選んだ痛ましい事件だ。
教会の一室に集まった四人の親たちは、緊張しながらも対話を試みる。始まりはぎこちなく、他人行儀だ。「ここに来たくなんてなかった」と言わんばかり。「親に責任があるのではないか」と直接罵倒することはないが、被害者家族が、親の責任をじわりと引き寄せようとする発言はリアルだった。
この映画はフィクションであり、役者はそれぞれの立場を演じているだけだ。にも関わらず、なぜこんな迫真の演技ができるのだろうか。四人の対話を聴きながら、こうも胸を打つのは、やはり感情移入してしまうからだろう。僕にも息子が二人いる。すくすくと育ってありがたい限りだが、彼らが高校生になったとき(あるいはその前に)、事件の当事者になる可能性はゼロではない。「少年A」として世の中の非難を浴びるかもしれない。そんなとき、僕はどのように息子に、そして被害者の家族に向き合うことができるだろうか。