雨の宮古島、人間らしさとAIと。

祖父は、小学校の校長で書道の講師でもあり、ものすごく達筆だった。そして、購入品には必ず購入した日と名前を記す習慣があった。

葬儀のあと、祖父が使っていた作業部屋をのぞきに行った。古い本と墨汁のにおい。小学生のころ、毎年夏休みにこの部屋で祖父に書道を習っていた。

机には辞書が何冊か並んでいて、その中のひとつ「ことわざ辞典」をひらいてみた。背表紙の内側には「昭和59年8月2日○○(氏名)」と達筆な祖父の字。

私にとってはその字、その本こそが祖父の肖像だった。夏休みの祖父の顔が、頭に浮かんだ。

「それでも私は生きていく」は、物や思い出そのものに大切な人が宿るということを思い出させてくれた。

「M3GAN/ミーガン」に見る、AIの脅威と手放せない便利さ

2023年上半期の映画業界大ニュースのひとつと言えば、5月2日に始まった全米脚本家組合(WGA)によるストライキだ。

WGAは映画スタジオやNetflixなどのストリーミングサービスに対して、公正な報酬の支払いを求め、AIに脚本を書かせることや、脚本製作のために学習させることを禁じるよう抗議している。15年前に同組合が行ったストライキは、100日間におよび、約30億ドルの経済損失を出した大規模なものだった。

今回のストライキも長引くと予想されており、その影響はすでに出はじめている。Netflixドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の製作が停止、「THE BADMANーザ・バットマン―」でコリン・ファレルが特殊メイクで演じたペンギンのスピンオフシリーズ「ザ・ペンギン」も撮影中断中だ。

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S H A R E
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1988年長崎県出身。2011年関西大政策創造学部卒業。18年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを開催。「カランコエの花」「フランシス・ハ」などを上映。映画サイトCinemarcheにてコラム「山田あゆみのあしたも映画日和」連載。好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を見る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中。