雨の宮古島、人間らしさとAIと。

osanai 2023年上半期振り返り 山田あゆみ

テクノロジーの進化は、”人間らしさ”と対立するものなのか?

便利さを追求することで、人として大切ななにかを失うことにならないか不安になるこの頃だ。

尊敬できる映画人との出会いや、“人間らしさ”のある映画、また、AIがもたらした映画業界への影響とそれに伴う変革とともに、2023年上半期をふりかえりたい。

雨の宮古島でエブエブと出会った

2023年5月8日、新型コロナウイルスがインフルエンザと同じ5類感染症に引き下げられた。それにともなって、国内外の旅行はすっかり解禁ムードだ。

私もここぞとばかりに、宮古島旅行に出かけた。旅行中の1日はあいにくの雨天。そこで、宮古島の市内をまち歩きすることにした。しとしと雨が降る中、カフェやギャラリーに寄り、偶然たどり着いたのは、宮古島唯一の映画館「よしもと南の島パニパニシネマ」だった。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3」の大きなポスターに引き寄せられて中に入ると、20年以上前の映画雑誌やパンフレットなど、映画ファンにはたまらないお宝が棚にびっしりと並べられていた。映画好きのための昔ながらの雰囲気……好きだ。わくわくしながらロビーを眺めていると、館長の下地史子さんが声をかけてくれた。

下地さんが館長になったのは、元館長で夫の昌伸さんが亡くなった3年前だという。

「それまでは売店業務しかしていなかったから、経営や上映作品の決め方も当初は分からなかった」とのこと。しかし、東京の映画配給担当者から個人的に協力したいという申し出や、地元の映画館ファンの協力、俳優や監督の応援が多数寄せられた。「宮古島に映画館を残したい」という思いを胸に、ここまでやってこれたと話してくれた。

上映ラインナップの「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のポスターを前に、下地さんは「私は面白いと思うんだけど、ちょっと難しいみたいで、そんなにお客さんが入らないんだよね」と言う。

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S H A R E
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1988年長崎県出身。2011年関西大政策創造学部卒業。18年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを開催。「カランコエの花」「フランシス・ハ」などを上映。映画サイトCinemarcheにてコラム「山田あゆみのあしたも映画日和」連載。好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を見る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中。