街から遠く離れた山間の“供花村”に、家族と共に駐在所の勤務員として赴任した阿川大悟。赴任初日、「山で死体が見つかった」との知らせが入る。その後も、次々と不可解なことが起こる中、阿川はどう立ち向かうのか──。
二宮正明の原作を、映画化に際して「岬の兄妹」「さがす」の片山慎三が監督を務めた。脚本は、「ドライブ・マイ・カー」の大江崇允。主演を務めるのは柳楽優弥。笠松将、吉岡里帆らが脇を固める。
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「ガンニバル」のあらすじ
見渡す限り、畑と山に囲まれる。
農業が主産業の広島の山村だ。
空には入道雲がかかり、蜃気楼で少し視界が歪む。じめじめとした夏の暑さの中、無気力な人物がバイクを走らせる。とある事件を起こして、田舎の駐在所に勤務することになった主人公である。
「タコ飯つくったけぇ食べんさい」と村人に呼びかけられた彼は、半ば強引にタコ飯と大量のとれたての野菜を渡される。
それまでの半生で出会ったことのないお裾分け文化に圧倒され、戸惑いと呆れを含みながら受け取る。
やはり無気力である。
もらったタコ飯におかずを数品加えて昼食をとっていた彼のもとに、「息子が山で狼を見た」と村人が相談に訪ねてきた。どうせ子供の戯言だと思うが村人は引き下がらない。渋々引き受けて、調査のために山に入る。
気だるげに山を調査していると、霧がかった山の中に大きな岩の御神体を発見する。夏の蒸し暑さなどとうに忘れてしまうほど、澄んだ空気と神聖さが漂う。
御神体の後ろにちらつく影を見て、彼は立ちすくむ。それまで散漫だった焦点が徐々に何かにピントを合わせると同時に、一気に緊張が全身を巡る。目を見開き、開いた口が塞がらない。
彼が目にしたものは……。
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「ガンニバル」を見た人はお気づきだろう。これは「ガンニバル」のあらすじではない。しかし、こうも思ってもらえるのではないだろうか。こういう話もあったかもしれない、と。
これは決して私がでっち上げたフィクションではない。2021年に公開された映画「孤狼の血 LEVEL2」のラストシーンである。
私は勝手に、「ガンニバル」を「孤狼の血 LEVEL2」のアフターストーリーとして見ていたのだ。が、その話をする前に、まずは「ガンニバル」のほんとうのあらすじを確認しておこう。