1923年、アイルランド内戦によって国内が揺れている中、イニシェリン島はのどかな生活が保たれていた。そんなある日、親しい友人同士だったパードリックとコルムが仲違いしてしまう。
監督を務めたのは、「ヒットマンズ・レクイエム」「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー。主人公のふたりをコリン・ファレル、ブレンダン・グリーソンが演じる。
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不条理からは逃れられない
世の中には、どうあがいたって、どうにもならない不条理なことがたくさんある。
わかってはいる。理解はしている。しかし、不条理な現実の中にも、ほんのすこしの希望を見つけたい、と考えてしまう私がいる。というか、そうしなければ身がもたない自分がいるのだ。
今回鑑賞した「イニシェリン島の精霊」は、けれども、そうはさせてくれなかった。不条理はどこまでいっても不条理。どうしようもないのだと真正面から突きつけられたような気がした。
鑑賞後は、ひどく困惑し、正直滅入ってしまった。私はこれまで希望を見つめていたのではなく、不条理から目を背けていただけなのかもしれない。いや、こんなにつらい現実を直視する必要が本当にあるのか?頭も心も整理できなくて苦しかった。
2時間前、H列13番で上映を待っていた自分を思い返す。どうして観てしまったのだろう。確かに作品としての魅力は感じたものの、鑑賞直後の時点では、この作品に出会ったことを、やや後悔もしていた。