【ブラッシュアップライフ】ありえなさとリアルさの狭間で

osanai ブラッシュアップライフ

地元の市役所で働く女性、近藤麻美、33歳。ひょんなことがきっかけで交通事故死してしまった彼女が、死後案内所にて、「今世をもう一度やり直す」ことを決断する、タイムリープフィクション。
脚本はバカリズム。主演は「百円の恋」「万引き家族」「ある男」の安藤サクラ。

──

「もし今の知識・経験のまま、過去をやり直せるとしたら、何歳に戻る?」
「えー……?少なくともひとり暮らし始めてからとかかなぁ。今の知識・経験があったら、学校でおとなしくなんてしていられないと思う」
「そっかぁ。私はね……」

10年近くの付き合いの親友と、そんな会話をしていたのは昨年の秋ごろだったか。だから、私たちの発想そっくりなドラマが始まったときは驚いた。

その名も「ブラッシュアップライフ」。安藤サクラさん演じる主人公・麻美が人生を何周もやり直しながら、文字通り、自らの人生をブラッシュアップしていく物語。

実のところ、私は最近の「転生モノ」ブームにうんざりしていた。異世界でヒーローやご令嬢に生まれ変わる、タイムスリップして歴史上の有名人物やそのサポート役として歴史を変えていく、などなど……。書籍にしろ映像作品にしろ、昨今はその設定があまりに供給過多だ。

なのに「このドラマはいい塩梅だ」と思えたのは、ワンシーンワンシーンがいちいちリアルすぎるから。ありえないはずなのに、ありえる話が満載なのだ。

そう感じるのは、私が主人公と同年代(麻美は33歳、私も今年33歳)で、彼女と同じように小〜中学校時代にラウンドワンができるような街の住宅街で育った、というのも影響しているだろう。

小学校のときのたまごっちブーム、プロフィール帳のやりとり、シール交換。中高のときに流行ったORANGE RANGEやレミオロメン……。

1 2 3
S H A R E
  • URLをコピーしました!

text by

随筆家。徒然なるままに徒然なることを。本・旅・猫・日本酒・文化人類学(観光/災害/ダークツーリズム)などなど。