【バレリーナ】韓国人気俳優チョン・ジョンソの魅力が光るスタイリッシュアクション映画

チョン・ジョンソの存在感

韓国の女性アクション映画というと、キム・オクビンがハードアクションをこなし一人称視点のカメラワークが特徴の「悪女/AKUJO」(2017)や、スーパーパワーをもつ少女をキム・ダミが演じた「The Witch/魔女」(2018)が挙げられるが、本作のアクションも一切引けをとらない。

ヒップホップミュージックと共に、流れるようなテンポで容赦ない攻防が繰り広げられる。オクジュ演じるチョン・ジョンソの力の抜けたクールな表情は、見るものを惹きつけて止まない。残酷で凄惨な返り血まで様になり、アートに見えてしまう……。

スタイリッシュなアクションムービー

オクジュの復讐相手であるチェ・プロのキャラクターに関しても、ビジュアル面で徹底した世界観を演出している本作に、マッチしていた。整った顔立ちに彫刻のような筋肉。ナルシシズム溢れる変態な悪人だが、目を奪われる。

唯一、本作で残念だったのは、物語のシンプルさだ。後半の展開が薄味で、復讐による爽快感がさほど得られない。オクジュを2度も始末し損ねたチェが、クライマックスにおいて、それほど脅威に感じられないからだ。

チェのボスについては、早々にオクジュが殺してしまったので、敵陣に厚みがなく、物足りない。先述したパク・チャヌク監督作品のようなドロドロとしたドラマを期待するのであれば、少々ライトに感じるだろう。

シンプルなストーリー展開ではあるものの、ネオンライトに照らされる、血まみれのチョン・ジョンソを見るだけでも、大いに価値があるといえる。親友を失った絶望を怒りに変えて、全力で敵を一掃していく姿は猛々しく、そして美しい。

アクションもこなし、ますます俳優としての才覚を見せたチョン・ジョンソだが、ハリウッドデビュー作「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」が11月17日に日本公開される。チョン・ジョンソは精神病棟から抜け出した特殊能力をもつ少女モナ・リザ役を演じ、ケイト・ハドソンと共演している。今後の彼女の出演作にも注目していきたい。

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■バレリーナ(原題:발레리나)
監督:イ・チュンヒョン
脚本:イ・チュンヒョン
音楽:GRAY
出演:チョン・ジョンソ、キム・ジフン、パク・ユリムほか
配信:Netflix
公式サイト:https://www.netflix.com/title/81572011

(イラスト:水彩作家yukko

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1988年長崎県出身。2011年関西大政策創造学部卒業。18年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを開催。「カランコエの花」「フランシス・ハ」などを上映。映画サイトCinemarcheにてコラム「山田あゆみのあしたも映画日和」連載。好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を見る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中。