そんなA24から上半期の作品で挙げておきたいのは、「aftersun/アフターサン」（5/26公開）。主演のポール・メスカルはアカデミー賞の主演男優賞にもノミネートされてますが、父と娘のひと夏のバカンスの思い出をとても情緒的に描いた作品。よく「行間を読む」なんて言いますが「行間しかない」映画です。シャーロット・ウェルズの長編デビュー作でもありこういう若い才能の意欲的な作品でアカデミー賞にノミネートまでさせるのはさすがA24です。
他には、「レッド・ロケット」（4/21公開）も上半期の作品。田舎に舞い戻った訳ありの元ポルノスターが、周囲を巻き込みながら再起を図ろうとするコメディ。もう、はた迷惑でしかないのになぜか憎めない男など底辺で生きる人にスポットを当てる俊英ショーン・ベイカー監督らしい作品。
メジャースタジオではないのだけれど、エッジが効いていて、スタイリッシュでクリエイターや若者に人気のある映画スタジオ「A24」。そのブランドイメージはかつてのAppleのよう。本当に勢いがあって上半期だけでもおさえておきたい作品が多いです。
上半期公開の作品で、アカデミー賞絡みでもありここ最近のひとつのブームでもある「映画についての映画」の作品からもご紹介します。
「フェイブルマンズ」（3/3公開）は、巨匠スピルバーグによる自伝的な内容のドラマ。子供の頃に映画と衝撃的な出会いをし、そこから映画少年として成長し、家族や友人たちをカメラにおさめ、そこに見たくない真実や見せたくない虚構を織り交じらせるという卓越した手腕で映画というものを描いてみせた作品です。アカデミー賞では、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、美術賞、作曲賞でノミネートされています。
次に「エンパイア・オブ・ライト」（2/23公開）はイギリスの老舗映画館を舞台にした人間ドラマなんですが、アカデミー賞で撮影賞にノミネートされたロジャー・ディーキンスにより映し出された映画館の外観から内装、劇場が朝オープンするまでの美しい映像がとても印象的です。
デイミアン・チャゼル監督による「バビロン」（2/10公開）。黄金期と言われた1920年代のハリウッドが舞台です。秩序も何もない今の常識からは逸脱した時代を、憧れと皮肉を込めてブラッド・ピット、マーゴット・ロビーらスターをキャストに絢爛豪華で荒唐無稽な世界として描かれた作品です。
