“「エブエブ」祭り”と振り返る2023年上半期の映画

助演女優賞を「エブエブ」で受賞したジェイミー・リー・カーティスも、ミシェルと同じく60歳以上で、これまで賞レースに絡む作品には出演してこなかった人です(ホラー映画「ハロウィン」シリーズが有名で、アカデミー賞には絡んでませんが最新作「ハロウィン THE END」(4/12公開)が公開)。そんな彼女たちのアカデミー賞でのスピーチは多くの女性に勇気と感動を与えたと思います。

上半期公開で他にアカデミー賞関連の作品も紹介していきます。

まずは、「ウーマン・トーキング 私たちの選択」(6/2公開)。#MeTooの流れを汲むメッセージ性のある作品で、キリスト教系コミュニティで昔から黙認されていたレイプ問題に女たちが遂に立ち上がる内容。作品賞にもノミネートされ、脚色賞を受賞しました。

そして「イニシェリン島の精霊」(1/27公開)、あの傑作「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督によるアイルランドの孤島で巻き起こる不条理劇。些細な諍いが発展してやがてとんでもない事態に……作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞など主要どころに多くノミネートされて一時は本命視されていましたが無冠に終わりました。

「逆転のトライアングル」(2/23公開)は、ブラックユーモアが持ち味のスウェーデンの奇才リューベン・オストルンド監督による、これまた底意地の悪い不条理劇。セレブが乗った豪華客船が座礁して無人島に漂着し、サバイバル能力の高いアジア系のトイレ清掃員と立場が逆転してしまうという展開。セレブや従業員は白人、コックや清掃員はアジア系というヒエラルキーをネタにしています。

そして、アカデミー賞の主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーの「ザ・ホエール」(4/7公開)。死期の迫った肥満男性が、娘との絆を取り戻そうとする家族の物語。栄光の過去から闇落ちした側の人生に寄り添うドラマを作るダーレン・アロノフスキー監督らしい作品。メイクアップ&ヘアスタイリング賞も受賞しています。

これを手がけたのがアメリカで最も勢いのある気鋭の映画スタジオ「A24」。「エブエブ」もA24で今回のアカデミー賞ではどのスタジオよりもノミネートが多かったのでは。

1 2 3 4 5
S H A R E
  • URLをコピーしました!

text by

移動映画館キノ・イグルー。全国で映画イベントいろいろ。年間300本くらい映画やドラマを観てます。インスタやnoteでも映画ネタを発信中。