毎年ですが、年の前半2月3月はアカデミー賞の関係で、ノミネート作品が盛り上がります。
そして今年でいうとやっぱり「エブエブ」こと「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(3/3公開)の話題じゃないでしょうか。
アジア人のおばさんが主人公で、カンフーにメタバース。下ネタもありで荒唐無稽なこの映画がアカデミー賞主要部門を席巻し、世界を沸かせました。
映画は時代を映すメディアであって、アカデミー賞もその時代へのメッセージ性が強い映画賞です。なのでこの“「エブエブ」祭り”現象が、今年の上半期を象徴する映画の流れじゃないかと思います。
近年では黒人差別問題でBLM(ブラック・ライブズ・マター)をメッセージとする作品、そこにLGBTQなどマイノリティに寄り添った作品が増え、#MeToo運動から女性へのパワハラ、セクハラ問題、自立した女性の男性社会へのカウンターを描く作品がトレンドとなっていて、そういうメッセージ性の作品が時代の空気とマッチして映画賞でも多く受賞していました。
そこから多様性の流れへときています。
黒人やLGBTQの他に、そこに居たのに居なかったかのようにずっと無視され続けていたのがアジア系です。キー・ホイ・クァンが「エブエブ」で助演男優賞を受賞しましたが、かつて子役時代に「インディー・ジョーンズ」や「グーニーズ」で人気を博すも、その後アジア系の役がなく、俳優を諦め裏方として過ごしていました。ある作品をキッカケに本作「エブエブ」のオーディションを受けた経緯があります。
そのキッカケとなった作品が「クレイジー・リッチ」。ハリウッド映画ながらキャストがほぼアジア系という作品でヒットを飛ばしました。ここに出演していたのが「エブエブ」で主演女優賞のミシェル・ヨーです。彼女の受賞には、“アジア系や中年以上の女性”という俳優としてのニーズが少ないところに希望を与えるものになりました。
主演女優の対抗だったのが「TAR/ター」(5/12公開)のケイト・ブランシェット。世界的指揮者に上り詰めた先で権力に溺れていく姿を描き、演技だけを純粋に見たらケイトの方が素晴らしいという意見にも頷けます。
だけどアカデミー賞は、上述したような世の中の背景やストーリーが影響をします。