【渇水】その流れに、意志はあるか

osanai 渇水

水道料金の滞納が続く家をまわり、「停水執行」をする水道局員の岩切と木田。群馬県前橋市では、酷暑で水不足の日々が続いている。そんな中、ふたりは幼い姉妹と出会うのだが──。
原作は1990年発表の河林満の『渇水』。「凶悪」「虎狼の血」の監督を務めた白石和彌がプロデュースを手掛けた。監督は高橋正弥、主演は生田斗真。ZAZEN BOYSの向井秀徳が音楽を手掛け、主題歌「渇水」を本作のために書き下ろしている。

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水がなければ、死んでしまう

土曜の朝。小さな映画館。E列8番に座り、水をひとくち飲んだ。

ノドが潤い、気持ちがすこし落ち着く。

と同時に、わずかながら心に感じる、不思議なうずき。これから観るのは、社会や人間の「渇き」をテーマにした映画だというのに。心身が潤ってしまったことを自覚し、鑑賞前からなんだか申し訳ない心持ちになった。

私は、水が好きだ。世の中の人の平均よりも好き、という変な自信がある。

朝起きて一杯。身支度をしながら一杯。最寄り駅に着いて一杯。昼食前までには、1リットルほどの水をからだに取り込んでいる。

こんなにも水を飲むのは、ノドがすこしでも渇くと気になって仕方がない、という私の性質が主たる理由だ。それから、精神的に落ち着く、というのも大きな理由である。

飲むだけでなく、触れるのも好き。もちろん山より海派だし、自宅の湯船は心のシェルターだ。水に触れていると時折、自分が「生物」であることを思い出す。おかしな表現だとは思うけれど、たしかにそう感じるのだ。ヒトは自然の恵みなくしては生きられない。

私のからだと心は、水がなければ、潤いがなければ、死んでしまう。ほんとうに、そう思う。

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S H A R E
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東京在住。コピーライター。好きな映画は「ファミリー・ゲーム/双子の天使」「魔女の宅急便」。