【ローズメイカー 奇跡のバラ】だから人生はおもしろい

思い通りにいかない人生の愉しみ方

人生のスタートラインに立てるタイミングは人によってきっと違う。スタートラインに立つためには、踏み出す地面が必要なのだ。その地面となり得るものが、おそらく安全地帯といわれるものなのだろう。

交配したバラは、想定していたところからは誕生しなかった。けれど想定外のところから素晴らしいバラが誕生した。それはエヴひとりでは生み出すことができなかった宝物だ。その結末は、母からは得られなかった安全地帯を、別の場所で見つけたフレッドの姿と重なった。

人生は思い通りにならないことばかりだ。自分ひとりでは手に入らないものだってたくさんある。だけど、だからこそ思いがけない喜びがあり、思いがけない人生になる。

そういえば20代の頃、自己啓発本の影響で「10年後こうなりたい」を書いたことがある。何を書いたかは1ミリも思い出せないが、まったく違う人生を生きていることはたしかだ。きっと当時わたしが想定していたよりずっと、いい人生を生きている。

今年のわたしも、思い通りにならないことの連続だった。だけど映画を観て、思いかげない出来事のすべては可能性なのかもしれないと思った。思い込みから映画を観ることが憂鬱だったわたしも、観終わった今は、思いがけず幸せな気持ちでいっぱいになっているのだ。今ある悩みも憂鬱も、わたしの未来に必要なことなのかもしれない。

──

■ローズメイカー 奇跡のバラ(原題:La Fine fleur、英題:The Rose Maker)
監督:ピエール・ピノー
脚本:ピエール・ピノー、ファデット・ドゥルアール、フィリップ・ル・ゲイ
撮影:ギヨーム・デフォンテーヌ
美術:フィリップ・シフル
編集:ヴァレリー・ドゥセーヌ、ロイック・ラレマン
音楽:マチュー・ランボレ
バラの監修者:ジョルジュ・ドリュ&フランソワ・ドリュ、アラン・メイアン、ミシェル・アダン
出演:カトリーヌ・フロ、メラン・オメルタ、ファツァー・ブヤメッド、オリヴィア・コート、マリー・プショー、ヴァンサン・ドゥディエンヌほか
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/rosemaker/

(イラスト:水彩作家yukko

1 2 3
S H A R E
  • URLをコピーしました!

text by

フリーライター、エッセイスト、Web編集者、ときどき広報。沖縄に10年くらい住んでます。読書と短歌と育児が趣味。