【デューン 砂の惑星PART2】シャラメ演じる“孤独なヒーロー”

最後に、映像の素晴らしさについても言及させてほしい。

広大な砂漠の美しさはさることながら、砂虫(サンドワーム)のリアルな造形の気持ち悪さだったり、虫みたいな形状の戦闘機もまるで宮崎駿映画の実写版のようで個人的性癖に刺さりまくった。それと登場人物たちが着ている服も、よくある未来を舞台に設定した映画にありがちなコスプレっぽい衣装じゃないことに好感を抱いた。このおかげで10191年という遠い遠い未来が、ぼくの今生きている2024年と地続きであると感じられる。自分もふとした瞬間に“あちら側”に行ってしまうのではないか、という錯覚を引き起こす作用こそがファンタジーの醍醐味だとぼくは考えているから。

PART2では回収されていない伏線もたくさん散りばめられていた。PART3の製作もすでに予定されているようなので、今から期待に胸を躍らせている。

ところでぼくは前回「ボーンズ・アンド・オール」のシャラメのルックスに影響され、髪を赤茶に染めてパーマをかけた。今回のシャラメは、ちょっと長めのセンターパートだ。トップはややストレートで、毛先に向かってカールしている。ぼく、髪伸ばそうかな。そしたらクウィサッツ・ハデラックになれる気がする。

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※シャラメに憧れを抱く者として、今作のレビューを書くうえで、シャラメ自身の例の問題発言にも言及する責務がぼくにはある。

シャラメは2023年11月アメリカのコメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演した際、コント内でミュージシャンを演じたのだが、バンド名を訊かれた彼は「ヘイマス。H -A -M -A-S」と返答した。創作といえど実際の戦争を意識して作られた物語にヒーローとして出演する彼が(そうでなくてもとうてい見過ごせないが)、それをネタにする。たとえコントの台本が前提でも、そしてシャラメ自身が決めた台詞でなくとも、この発言は許しがたい。熱心な彼のファンとして、強く非難する。今の今までこの件についてシャラメがなんの声明も出していないことも含めて。これまで弱き者を演じてきたシャラメがこんなことを言うなんて、正直、失望させられた。彼を愛しているひとりとして、そして民族的/人種的マイノリティとして、また物書きとして、この件についてぼくは彼を一切擁護しないと明言しておく。

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■デューン 砂の惑星PART2(原題:Dune: Part Two)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
原作:フランク・ハーバート『デューン 砂の惑星』
脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ジョン・スペイツ
撮影:グレイグ・フレイザー
美術:パトリス・ヴァーメット
編集:ジョー・ウォーカー
視覚効果監修:ポール・ランバート
衣装:ジャクリーン・ウエスト
音響編集監修:リチャード・キング
音楽:ハンス・ジマー
出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、デイブ・バウティスタ、クリストファー・ウォーケン、レア・セドゥ、スエイラ・ヤクーブ、ステラン・スカルスガルド、シャーロット・ランプリング、ハビエル・バルデムほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/dune-movie/

(イラスト:水彩作家yukko

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ライター。修士(学術)、ジェンダー論専攻。ノンバイナリー(they/them)/日韓露ミックス。教育虐待サバイバー。ヤケド注意の50℃な裸の心を書く。