【キリング・オブ・ケネス・チェンバレン】無知で無力な世界と僕と

権力は新たな差別を生み出す。

何かのコミュニティに属していれば、誰もが少なからず権力を持っている。親、役職者、先輩として。権力者の周りで差別は日常的に生まれうる。だからこそ、細心の注意を払う必要がある。

僕らは警官側に立っている。そのことを自覚しなければならない。自分にとってのケネスに出会ったときに、どうやって関係性を築くのかについて、何らかの答えを持っていなければならない。それができないのなら、僕らは警官として、僕らにとってのケネスを射殺することになるのだろう。

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映画を観て感じることは人それぞれだ。いろいろな見方があり、いろいろな感じ方がある。作品が伝えたいと思うことをどんな風に受け取ってもいい。言うまでもなく、芸術とは、表現とはそういうものだ。

しかし、この作品についてはそう言いたくない。この作品に込められているものを、そのままに受け取ってほしい。観た人が傷を負うことをわかったうえで、この作品を作った人たちの戦いのことを考えてほしい。今も戦っている人たちがいること、その勇気を知ってほしい。

現実という戦場の前で、立ちすくんだり、途方に暮れたり、目をそらしてしまうかもしれない。立ち向かえないことに失望することもあるだろう。それでも、戦っている人がいることを知ることから、その人たちの存在が世界にどれだけ意味を与えているかを考えることから逃げたくないと思う。僕にとってそうであったように、一人でも多くの人にとって、この作品が戦場から逃げない理由の一つになることを願っている。

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■キリング・オブ・ケネス・チェンバレン(原題:The Killing of Kenneth Chamberlain)
監督:デヴィッド・ミデル
脚本:デヴィッド・ミデル
プロデューサー:エンリコ・ナターレ、デヴィッド・ミデル
製作総指揮:モーガン・フリーマン、ロリー・マクレアリー、シャラド・チブ、クリス・パラディーノ、ゲイリー・ルチェッシ、ミラン・チャクラボルティ
撮影:カムリン・ペトラマーレ
美術:ジャクリーン・スタンフォード
衣装:アマンダ・バンダー・ビル
編集:エンリコ・ナターレ
音楽:スティーブン・“キング・ラック”・ウィリアムズ、ギャレット・ビーロウ
出演:フランキー・フェイソン、エンリコ・ナターレ、アニカ・ノニ・ローズほか
配給:AMGエンタテインメント
公式サイト:https://kokc-movie.jp/index.html

(イラスト:水彩作家yukko

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1984年生まれ。兼業主夫。小学校と保育園に行かない2人の息子と暮らしながら、個人事業主として「法人向け業務支援」と「個人向け生活支援」という2つの事業をやってます。誰か仕事をください!