私とは別のカテゴリに属すあなた
本作は、脚本家をめざすフリーターの真紀と、映画配給会社で働く国秀、そして彼らを取り巻く人々を描いた物語だ。真紀と国秀は、互いの夢を応援し、協力し合ううちに、惹かれ合い、仲が深まっていく。
しかし、国秀が、自身が在日韓国人3世であることを真紀に告げた日から、ふたりの関係は変わってしまう。真紀は、韓国人を嫌う母や、祖父の営むミニシアターでの炎上事件の影響もあり、国秀を個人として見られなくなっていく。そして、いつしか在日韓国人を差別するようになる。ミニシアターで思いがけず遭遇した国秀を、一緒にいた自分の母親に「映画配給会社の人」とよそよそしく紹介してしまうのだ。彼のことが好きだったはずなのに。これまで差別をする人間をなんとなく嫌な気持ちで見てきたはずなのに。
真紀から突き放された国秀は、悲しい顔で言う。
「僕、別人になっちゃったみたいですね」
同じ人間であるはずなのに、出自を知っただけで関係が変わってしまったのだ。「私」と「あなた」という1対1だったはずの関係は、「私」と「私とは別のカテゴリに属すあなた」に変化し、ふたりの間に大きな距離が生まれる。真紀は、国秀の悲しい顔を目の当たりにしてはじめて、自分の過ちに気がつく。
人間は、自分の嫌な部分は、つい見ないふりをしてしまうものだ。きっと多くの人が、自分でも気づかないうちに誰かを差別し、傷つけている。
私も、そのひとりかもしれない。そう思うと、体の奥底からぞっとした。真紀と自分が重なる。本当に不勉強で、当事者意識に欠けていた。