東京の出版社で編集者として働く浩輔が、パーソナルトレーナーの龍太と出会う。すぐに惹かれ合ったふたりだが、間もなく龍太が別れを切り出す──
原作は、エッセイスト・高山真の自伝的小説『エゴイスト』。お互い惹かれ合う浩輔と龍太を、鈴木亮平、龍宮沢氷魚が演じる。監督は「ハナレイ・ベイ」の松永大司。
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8〜10%前後、およそ10〜13人に1人。
これは、日本におけるLGBTQ当事者の、おおよその割合の数字である。
私自身は、ジェンダーに関してはマジョリティの側である。しかし、性虐待サバイバーの過去を持ち、解離性同一性障害を抱えている点において、マイノリティの属性を持っている。これらの事実を、私は「碧月はる」のペンネームの上でしか明かしていない。私の本名とあわせて、この事実を知っているのは、主治医とパートナーのふたりだけだ。
明かせば、迫害される。だから、多数派であるマジョリティのふりをする。マイノリティの多くは、そうやって生きている。映画「エゴイスト」の主人公である浩輔と龍太が、外では手をつなぐことさえなかったみたいに。
ファッション誌の編集者として働く浩輔は、友人の紹介でパーソナルトレーナーの龍太と出会う。ふたりの関係が友人から恋人へと変化するまでに、そう長くはかからなかった。だが、ある日唐突に、龍太は浩輔に別れを切り出す。
龍太には、病を抱える母親がいた。生活費と治療費をまかなうためには、パーソナルトレーナーの収入だけでは到底足りない。そのため、龍太は体を売って日々の生計を立てていた。
愛する人がいる。それなのに、他人に体を開かねばならない。その葛藤に苦しんだゆえの別れであった。そのことを知り、浩輔は龍太だけではなく、龍太の母親の生活をも支える決意をする。しかし、その後、思いがけない喪失と痛みが浩輔を襲う。