ジャヨンにも、心を許せる友人や家族がいる。
「30歳になったら、何者になれるはずだ」。そう信じてきた彼女だが、なかなか思い通りに人生は進んでいかない。女子会では、それなりに毒舌トークをかますけれど、実は表面的で、一番大切な肝に触れずに会話が終わってしまう。本心を吐露すれば、容赦ないダメ出しが飛んでくるのが目に見えているからだ。親しい友人から、そんな言葉は聞きたくない。
ジャヨンとウリの会話は、どこにも到達しないけれど、いつまでもグダグダと喋っていられる性質のものだった。安定飛行で、心は安心を保ったままで本心を打ち明けることができる。
恋愛にせよ、友人関係にせよ、全くの他人であるにせよ、こういった関係があると、人生はものすごーーく楽になりそうだ。
恋愛ドラマは、愛の形の「見える化」だと書いた。
そうであるならば、「恋愛の抜けたロマンス」とは、また新しい愛の形の提示といえるだろう。目的なんて定めなくて良い。グダグダと、無駄話を続けていく関係でも良いじゃないか。
そんな愛の形を、とても愛おしく感じることができた。
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さて、冒頭の質問について。
「現実は、自己評価から2段階低い」とのことです。
普通の人は、全く他者から惹かれないという現実にげんなりしますね。それ以上に、100%文句なしに他者から惹かれるという人はいないというのも、また事実。比較したって仕方がないけれど、ちょっとだけ安心しちゃう気もします。
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■恋愛の抜けたロマンス(原題:연애 빠진 로맨스、英題:Nothing Serious)
監督:チョン・ガヨン
脚本:チョン・ガヨン、ワン・ヘジ
撮影:イ・ソンジェ
編集:ナム・ナヨン
美術:ソ・ジュヨン
音楽:ソヌジョンア
出演:チョン・ジョンソ、ソン・ソック、コン・ミンジョン、キム・スルギ、ペ・ユラム、キム・ジェファ、キム・グァンギュ、キム・ヨンオクほか
配給:クロックワークス
(イラスト:Yuri Sung Illustration)