アメリカ・デトロイトで恋人と仲睦まじく過ごすゾラが、ひょんなことから出会ったダンサーのステファニーと共に、フロリダへの「出稼ぎ」旅へと出向くことに。148のツイートが元になった、2人の少女によるロードムービー。
主人公・ゾラをテイラー・ペイジ、相棒のステファニーをライリー・キーオがそれぞれ演じている。監督は、長編デビュー作「Lemon」で注目を集めたジャニクサ・ブラボーが務めている。
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「いや、ヤバすぎ」
明かりが付いて、思わず呟く。
のろのろ立ち上がって、GALAXYの電源をつけて、デカチン下さい……と切に祈る女性のシーンを思い出して、いや不謹慎すぎやろ、とにやける。いつも感じるような映画の残り香は体にないけど、あの主人公の凛とした瞳とバチバチのまつ毛を思い出して笑みがこぼれた。
うん、今日はいい日になった。
私事だが、最近新宿駅である「おじ様」に明らかに故意に体当たりをされた。(ぶつかったとはちょっと言えない、カバンを振りかぶっての見事なアタック攻撃であった)
この作品は、そんな、いわゆる男性有位的な社会で女性が強く、主体性を持って「上手く」生き抜いているかが根底にありながら、正座をして観なきゃ行けないような雰囲気はない。あくまで「ね〜、ちょっと聞いて?こんなことあってさ、ありえなくない?」という口調で描かれている。
実際の@Zolaのツイートが元になっている今回の映画、ストーリー自体は単純明快でもかなりドロっとしていて、性的なシーンも多いが、作品全体にはさっぱりとした風が吹いている。
私が今作で心地よかったのは、肉欲の匂いが全く感じないセックスシーンである。
性を欲する様は読み取れず、ただやらなきゃいけない作業をしているだけのように撮っている。その冷静な視点に、ステファニーを「バカ」として描くのではなく、彼女もまた強い尊厳のある女性として描かれていると思えたのだ。
黒人女性監督によって描かれた今作は、造り手の欲望などを全く感じない。
セックスシーン、強者への媚びやごねる彼氏へのリップサービス、あくまで全てこなすべきタスクにチェックマークを入れるような冷めた視点がある。次々に性器が映る場面、ただ目の前に出されるものを見る様な、そこに対しての欲求や感情は全く湧いていないんだな、と感じさせる撮り方は秀逸でリアルで、皮肉めいていた。