高速道路のサービスエリアで寝泊まりする4人家族は、サービスエリアの訪問者に2万ウォン借りながら食いつなぐ生活を送っていた。詐欺だと気付いた女性が、警察に通報することから家族の形が変わっていく──。
監督を務めたのは、本作が初の長編作品となるイ・サンムン。主演は「太陽を抱く月」「ポッサム〜愛と運命を盗んだ男〜」のチョン・イル。
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映画「高速道路家族」を見た。僕はこの映画を見ながら、家族や社会、福祉、個人のことなど、いろんな視点から思考をぐるぐるさせていた。
多くのトピックが詰め込まれているけれど、やっぱりこの映画は「高速道路」の映画だ。「高速道路とは何か?」という問いと併せて考えてみたい。(編集部注:原題は고속도로 가족、英題はThe Highway Family。いずれも邦題と同じ「高速道路家族」という意味になる)
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高速道路の風景を思い浮かべてみることから始めてみよう。
僕の実家は関西にあって、小さい時から祖父のお墓参りのためによく淡路島に行っていた。実家からは車で2時間程度の距離だ。
今では淡路島はすっかり観光地化していて、賑わっている。サイクリングする人も少なくない。とはいえ、僕が淡路島に行く予定といえばもっぱらお墓参りなので、観光地化した淡路島とは無縁で、僕にとっての淡路島は線香の香りとセットだ。
墓地は海沿いの小さな山の上にある。墓地からは海を見下ろすことができ、時々遠くから海水浴をしている人たちの声が聞こえてくる。
墓地がある場所は、バーベキューもできるような海水浴場とは違い、非常に閑散としている。
ゆったりとした時間、といえば聞こえが良いかもしれないが、どちらかというと素材そのままの無加工の時間と自然がそこにはある。
決して快適とはいえないまでも、確かに、観光地のように加工された時間と空間とは異なる体験だ。
淡路島でのメインイベントはお墓参りなので、基本的には行って帰るだけだ。大半は車の後部座席に座っているということになる。幼少期の僕にとって、景色の変わらない高速道路での移動はだいたい退屈なものだったけれど、楽しみなこともあった。
それは明石海峡大橋を渡ることと、淡路サービスエリアだ。