【僕らの世界が交わるまで】自己愛が向かう先にあるはずのクラッシュ

osanai 僕らの世界が交わるまで

DV被害に遭った人々のためのシェルター運営をするエヴリンと、インターネットのライブ配信で人気の高校生ジギー。お互いのことを分かり合えないふたりが、少しずつ分かり合っていく物語。
監督・脚本を手掛けたのは、俳優としても活躍するジェシー・アイゼンバーグ。作中の親子はジュリアン・ムーアとフィン・ウォルフハードが演じている。

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アイゼンバーグの探究心が生んだ物語

「ソーシャル・ネットワーク」や「グランド・イリュージョン」などで知られる俳優ジェシー・アイゼンバーグの初の長編監督作品だ。最近は、舞台脚本や「ザ・ニューヨーカー」誌にたびたび寄稿するなど、ライターとしても活躍している。

彼の知名度ゆえ、本作を見終わった後アイゼンバーグの顔を思い浮かべた人も多いだろう。

私も「きっと優しく、繊細な人なのだろうな」と想像した。それと同時に、微妙にズレた親子関係を描いた理由が気になった。一生懸命ながら空振りしてしまう親子の姿から、皮肉も感じられたからだ。

本作のきっかけとなったのは、アイゼンバーグの亡き義母。DV被害者のためのシェルターをインディアナ州に設立して周辺住人のために尽力した人物だったという。

そんな高潔な倫理観をもつ人物が、異なる価値観をもつ近しい人物をどう受け入れるのだろう?というアイゼンバーグの探究心から本作は生まれたそうだ。

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S H A R E
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1988年長崎県出身。2011年関西大政策創造学部卒業。18年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを開催。「カランコエの花」「フランシス・ハ」などを上映。映画サイトCinemarcheにてコラム「山田あゆみのあしたも映画日和」連載。好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を見る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中。