『現代社会の写し絵』と言えばもう一点気になるシーンがあった。真面目を悪とする奴らについてだ。冲方の彼女と千弦の彼氏の会話の中で、お互いの恋人のことを「真面目すぎてつまらない」というようなニュアンスで表現していた。
私は、この表現が本当に嫌いだ。長所のはずである真面目な性格を小馬鹿にして、クレイジーと言われるような『あるある人間』が面白いと思われてしまう現代の感覚に嫌気がさす。本当に面白い人は相手の面白いを見つけられる人だと思う。「真面目すぎてつまらない」と言う人ほどつまらない人間なのではないか。あくまで主観なので悪しからず。
このような皮肉を考えながら観ていると、いつの間にか物語は佳境に入っていた。クレイジーな人間たちと殺人事件の答え合わせ。『よくある流れか。予想通りのめっちゃ簡単なミステリーじゃん』と思って観ていると、『あれ?若干違うな』という流れになり、ラストに向かっていき、その時に気付いた。『あ、定期的にあった、気にするほどでもないけど少し違和感のあった映像たちは繋がっていた』と。
一番狂っていたのは、違和感をサラリと流してしまう自分の心だった。
いつからだろう?違和感を違和感じゃないと勝手に決めつけて流すようになったのは。医者の家政婦の息子奏翔は作中でこう言っていた「玲奈(医者の娘)はかわいそうなんだよ。1個1000円のイチゴは食べたことあるけど、コンビニのお菓子は食べたことないんだよ」と。一番正常なのは子供だった。ほとんどの大人は狂っている。だとするならば、このクレイジーな世の中から正常な子供たちの感性を守るために、「いい人になる努力」をしよう。
最後まで拙い文章で、申し訳ございません。
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■クレイジークルーズ(英題:In Love and Deep Water)
監督:瀧悠輔
脚本:坂元裕二
撮影:谷川創平
照明:李家俊理
録音:池田雅樹
美術:花谷秀文
装飾:鈴木仁、中澤正英
スタイリスト:BabyMix
音楽:村松崇継
出演:吉沢亮、宮﨑あおい、吉田羊、菊地凛子、永山絢斗、高岡早紀、安田顕ほか
配信:Netflix
公式サイト:https://www.netflix.com/title/81502828
(イラスト:水彩作家yukko)