転んで、転んで、何度だって起き上がる
彼女たちは、不器用ながらも、今この瞬間の衝動に素直に、一生懸命生きている。果敢に挑む。全力でぶつかる。だけど、そのぶん転んだ時の代償も大きい。
痛い。悔しい。もどかしい。恥ずかしい。逃げたい。
勢いよく転び、そのたび心が激しく揺さぶられる。そして、それでも、彼女たちは起き上がるのだ。そうやって確かに自分を見つけていく姿は、実にかっこよく、とてもキラキラしていた。
どんなに転んでも起き上がる、そのパワーの源は、どこからくるのだろうか。私には、特に3つのものが、彼女たちの支えになっているように思えた。
まず、「信じ合える友だち」。作中では、友だちが彼女たちを支えてくれるシーンがたびたび描かれる。なかでも、ミンミがロンコを勇気づけるシーンは印象的だ。
「あんたは女神よ」「きっとうまくいく」
普通じゃないかもしれないと悩むロンコにとって、こんなにも心強いことはないだろう。なお、エマが友だちに救われるシーンは描かれていないが、彼女にとってはスケートがずっと仲良くしてきた友だちのような存在だったように思う。
どんな時も信じ合える友の存在は、人を強くする。友だちっていいな、と当たり前のことをあらためて感じて、胸がきゅぅっと温かくなった。
次に「おしゃれ」。ミンミも、ロンコも、エマも、みんな、おしゃれだ。服や小物、メイクなど、みんなそれぞれに自分の好きなものをこだわって選んでいる。さらにはミンミの部屋や、ミンミとロンコが働くスムージースタンドまで、可愛すぎてヤバい。
好きなものに囲まれると、勇気が湧く。なんだってうまくいきそうな気がしてくる。おしゃれや可愛いものが与えてくれるパワーは、大袈裟じゃなく、本当に魔法のようだと思う。ミンミとロンコがメイクをし合うシーンも、すごく素敵だった。
そして「音楽」。作中で何度か描かれていた、彼女たちが音楽にのって歌ったり踊ったりするシーンも印象的だった。いろいろあるけど、とりあえず歌っちゃおうぜ。というノリは、人生において結構大事。特にティーンの時に友だちと聴いた音楽には、その場の雰囲気も含めて、不思議な力があったと思う。
転んでも大丈夫。痛くたって、起き上がれる。
だって私には、あなたがいるから。気分を上げてくれる、おしゃれと音楽があるから。
彼女たちから、そんな強さを感じた。
やさしくて、可愛くて、パワーにあふれる100分間だった。転んだ時、元気のない時、不安な時、もちろんそうじゃない時も、また会いに行きたい。そんな3人の女友だちがフィンランドにできた金曜日だった。
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■ガール・ピクチャー(原題:Tytöt tytöt tytöt、英題:Girl Picture)
監督:アッリ・ハーパサロ
脚本:イロナ・アハティ、ダニエラ・ハクリネン
撮影:ヤルモ・キウル
編集:サム・ヘイッキラ
出演:アーム・ミロノフ、エレオノーラ・カウハネン、リンネア・レイノほか
配給:アンプラグド
(イラスト:Yuri Sung Illustration)