【茶飲友達】生きる希望を待っているからこそ、生きることが苦しくなる

そんな私は、いつしかマナの考えに共感していた。

マナたちはビジネスとして、「ティー・フレンド」を経営していた。「高齢者売春斡旋」だ。法律が許すはずがない。

だけど、マナは「正しいことだけが幸せじゃない」と信じて止まなかった。そう思うことで、マナ自身が自分を奮い立たせていたのだろうと私は思う。
そうでもしなきゃ、崩れ落ちてしまいそうなくらい、マナの心は脆く、ボロボロだったのだ。

私が「自分がなんとかしなければ家族が成り立たなくなってしまうのではないか」と自分を鼓舞し、家族のために必死だったあの頃のように。

少なくとも、マナはそんな「ルールの隙間からこぼれ落ちてしまう者たち」を「ファミリー」だと信じてきた。本当に救われた者たちだってたくさんいたに違いないのに、「自分の寂しさを他人の孤独で埋めるな」という一言で片付けられてしまう。

そんなの辛すぎると思った。

少ない年金生活に困り、物を盗んででも、身体を売ってでも、必死に生き延びようとする高齢者から職を奪い、客からは希望を奪った。

法で定められた「善と悪」のジャッジにより、数々の失われた「生きる希望」。
我々は、社会が決めたルールの隙間からこぼれ落ちてしまう者たちに、目を向けられているのだろうか?

血のつながった家族だけを、本当の「家族」と呼べるのか?

親もいない、相手もいない、それでも強く母になりたいと願うシングルマザーは子供を出産し、「家族」を作ってはいけないのだろうか?

「茶飲友達」は、シニア世代の影の部分と、その側で働く若者たちの未来への葛藤をリアルに描いている。

自分にとっての家族とは何か?
高齢者が感じる本当の孤独とは何か?善と悪とは何か?

鑑賞後にぜひ、考えてもらいたい。

──

■茶飲友達
監督:外山文治
脚本:外山文治
プロデューサー:市橋浩治、外山文治
撮影:野口健司
録音:宋晋瑞
美術:中村哲太郎
装飾:前田巴那子
スタイリスト:岡澤喜子
衣装:大場千夏
ヘアメイク:荒川瑠美
音楽:朝岡さやか
出演:岡本玲、磯西真喜、瀧マキ、岬ミレホ、長島悠子、百元夏繪、クイン加藤、海江田眞弓、楠部知子、海沼未羽、アサヌマ理紗、中山求一郎、渡辺哲ほか
配給:EACHTIME

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アパレル業界出身のシステムエンジニア。オンラインコミュニティ「Beauty Ritual」運営。恋愛映画がすきだけど、オールジャンル鑑賞します。