女性の立場を見つめ直す作品たち

アメリカからは、「セイント・フランシス」。30代半ばで独身、大学中退でアルバイトで何かと焦りのある主人公がナニーの仕事で出会った気難しい少女や彼女のレズビアンの両親との交流で成長していく話なのですが、ここでも予期せぬ妊娠や中絶の辛さや男女の不平等さをとても上手く表現しています。主演女優のケリー・オサリヴァンが自ら脚本を書き、自分で演じ、メッセージ性ある作品をとてもポップに仕上げました。

アメリカで中間選挙の重要な議題のひとつになっているのが、「中絶できる権利」です。保守層からは反対されてますが、レイプや病気など望まれない妊娠でも中絶できないなど問題を抱えていて、そういう問題意識が反映されてます。

そしてアメリカからもう1本。1950年代の典型的な理想家庭を舞台にした「ドント・ウォーリー・ダーリン」。こちらも傑作学園コメディ「ブックスマート」を作ったオリヴィア・ワイルド監督なので、普通には終わらせません。男はキラキラのアメ車に乗って仕事に行き、女はプール付きの一軒家をピカピカにする専業主婦。そんな型にはまった昔の価値観を揶揄するサスペンスとして表現してきました。この監督も今の時代の空気感を表現できる若手の代表的な女性監督ではないでしょうか。しかも普段は女優です。
こういう才能ある女優が、自らプロデュースする流れが出てきているのもいいなと思います。

イギリスからは、「スペンサー ダイアナの決意」。王室に入って自由や尊厳を奪われたダイアナ妃が、自立したひとりの女性であることを決意するに至る3日間にフォーカスした作品で、古き悪しき慣習への静かで力強い反感がとても伝わってきます。ダイアナ妃を演じたクリステン・スチュアートがアカデミー賞で主演女優賞にノミネートされただけあって、ファッションも含めて注目度が高いです。

続いては、韓国から「三姉妹」。普通に生活しているようで、実はいろいろと問題ありな三姉妹が織りなす三者三様の物語。ひとつの結末に向かっていく構成も面白いですが、とにかく三人の女優の演技がすごい。家父長制に対するアンチテーゼを強烈に体現してました。

韓国は近年「はちどり」や「82年生まれ、キム・ジヨン」など、この手の良作が出てきてます。

そしてイランからは「白い牛のバラッド」。夫が冤罪で死刑になってしまい途方に暮れる妻の元に、夫の親友だったという見知らぬ男が訪ねてきて何かと援助してくれるがこの男には秘密があって……という、とても良くできたミステリー仕立てのドラマ。展開も面白いのですが、欧米よりも男性社会で、女性の地位が低いイランならではの女性の自立を描いた作品です。
イラン映画って馴染みない方もいると思いますが、実は映画が盛んな国なんです。
アスガー・ファルハディ監督の「別離」が、このテーマで有名な作品です。

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S H A R E
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移動映画館キノ・イグルー。全国で映画イベントいろいろ。年間300本くらい映画やドラマを観てます。インスタやnoteでも映画ネタを発信中。