【すずめの戸締まり】時間の積み重なりが、かけがえのない日常をつくっていく

osanai すずめの戸締まり

九州の静かな町で暮らす17歳の岩戸鈴芽は、ある日、扉を探している青年・草太に出会う。彼の後を追い掛けて山中の廃墟で見つけたのは、古びた扉。その近くに、災いが潜んでいるとも知らずに──。
「君の名は。」「天気の子」の新海誠による3年ぶりの新作。企画・プロデュースは川村元気、音楽はRADWIMPSと陣内一真が務める。主人公の岩戸鈴芽役には、若手俳優の原菜乃華が抜擢された。

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生きる者に唯一、平等に与えられているものといえば時間だ。動画のように倍速にすることも、スキップすることも、巻き戻すこともできない。1日に同じだけの時間を積み重ねながら、人は生きている。

時間の積み重なりが人をつくり、日常をつくり、世界はまわっている。

新海誠監督の最新作「すずめの戸締まり」は、「後ろ戸」に開いていると災いをもたらす扉を閉めるため、鈴芽(すずめ)と草太(そうた)が日本の廃墟をめぐる旅をする物語。

人がいなくなった土地は、時間が経つとともに廃れ、廃墟と化す。

その土地にあったはずの人の声や想いがなくなることで歪みがうまれ、死者が住まうすべての時間が存在する「常世(とこよ)」に繋がる扉から、禍々しい巨大ミミズが飛び出してきて、地震を起こしているという。

そのミミズを鎮めていた要石を、ひょんなことから鈴芽が抜いてしまい、猫の姿に戻った要石は草太を椅子にしてしまう。そのまま逃げた猫「ダイジン」を捕まえるために、ふたりの旅ははじまる。

小さな日常と大きな日常を支えるもの

扉をみつけることができても、地震の予兆である巨大ミミズがすごい勢いで飛び出している扉を閉じるのは至難の技。「閉じ師」として数々の扉を閉めてきた草太ならまだしも、素人の鈴芽は命がけ。

危ないから手伝うのをよせという草太に、「死ぬのは怖くない」という鈴芽。

鈴芽は2011年の東日本大震災で母親を亡くし、4歳で孤児となった。
突然やってきた災害に、鈴芽の日常は壊されていた。たまたま自分は生き残ってただけという意識を、鈴芽は強く持っている。

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S H A R E
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最近会社を辞めました。登山しながら、書きながら、暮らしていけたら最高です。