【PLAN 75】ラストシーンで問われたもの。希望を語れる社会を作りたい(株式会社Blanket 代表取締役・秋本可愛)

介護から、ポジティブなニュースを作りたい

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──秋本さんはラストシーンをどのように感じましたか?

ミチさんが、「生きる」という選択をしてくれたことに安堵しました。

「プラン75」によって、彼女も一度は死を決断したはず。でも死の間際に、「やっぱり生きたい」という本能が出てきたのではないでしょうか。「生きるのは辛い、それでも生きたい。死ねない!」というような。

生きることに希望を持てたわけではなく、あくまで「死にたくない」という感情。そんな心の動きが生々しく描かれていたラストシーンだと感じました。

──ラストシーンでは、「これから」のミチは描かれていません。

彼女がこれからどうなるのか、それは観る側に委ねられたように感じました。私は、「あなたはミチさんのために、どんな社会を作るんですか」と問われた気がしました。

「生きる」という選択をしたミチさんのような方が、高齢者としての生活にどうしたら希望を持てるようになるのか。私自身、これから事業を通じて考え続けなくてはいけないことだと思います。

──秋本さんは、「希望」という言葉をよく使っていますね。

根本的に、人は誰しも可能性を持っていると私は考えています。でもいまの社会では、高齢者に限らず、色々な環境や理由によって可能性を諦めてしまう人が多いのではないかと思うんです。

特に介護は、希望が奪われてしまうイメージがある。

高齢者は、できなくなること、分からなくなることが増えると、自分自身では希望を見出せなくなります。また家族にとっても、家族の介護を理由に、自分の働く時間や自由に使える時間が制限されてしまうことも少なくありません。高齢者の雇用の創出や、様々な介護サービスが増えて改善されてきたとはいえ、いまも見えないところで、働きたくても働けなかったり、誰かが苦しんだりしている現状があると思います。

──確かに「介護」と聞くと、あまり前向きなイメージは持てません。

実際に、介護をきっかけに新しいつながりが生まれています。介護が必要になっても、認知症の症状があっても、いきいきと暮らせる環境が増えているのも事実です。

それでも、2040年までに介護需要は更に高まり、大変さばかりが目立っているようにも感じます。

だからこそ、私の役割は介護の世界で見つけた希望を届けること。そして、私自身もポジティブなニュースを作っていくことだと思っています。高齢化が世界一進む日本においては、介護は多くの人の人生に紐づくことです。世代や業界を超えて、色々な人を巻き込みながら希望を持てる社会を目指したいです。

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(Photo by 結城 拓人)

──

■PLAN 75
監督:早川千絵
脚本:早川千絵
プロデューサー:水野詠子、ジェイソン・グレイ、フレデリック・コルヴェズ、マエヴァ、サヴィニエン
コプロデューサー:アレンバーグ・アン
音楽:レミ・ブーバル
撮影:浦田秀穂
出演:倍賞千恵子、磯村勇斗、ステファニー・アリアン、たかお鷹、河合優実、大方斐紗子、串田和美ほか
配給:ハピネットファントム・スタジオ

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株式会社TOITOITOの代表です。編集&執筆が仕事。Webサイト「ふつうごと」も運営しています。