【シビル・ウォー アメリカ最後の日】分断を理由に諦めないために

osanai シビル・ウォー アメリカ最後の日

分断が加速し、アメリカ国内で内戦が勃発。テキサス・カリフォルニアの同盟からなる西部勢力と、大統領が率いる政府軍による武力衝突が激化する中、大統領の肉声を取材しようとカメラマンのリーと記者のジョエルらがワシントンD.C.に向かう。
監督・脚本は「エクス・マキナ」「MEN 同じ顔の男たち」のアレックス・ガーランド。キルステン・ダンスト、ケイリー・スピーニー、ワグネル・モウラがキャストとして名を連ねている。

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「シビル・ウォー アメリカ最後の日」は近未来のアメリカが舞台の戦争映画であり、ジャーナリストたちのロードムービーである。

この世界では、憲法で任期が2期8年までと定められているはずのアメリカ大統領が3期目に突入しており、政府を捜査できる権限を持つFBIが解散させられている。独裁的な連邦政府から、19の州が離脱。そのうちのテキサス州とカリフォルニア州の同盟である「西部勢力」と連邦政府間で内戦が勃発、国内の各地が戦場になっている。

「アメリカ国内で内戦が起きるなんてそもそもありえない」と思うだろうか。

しかし、ドナルド・トランプ大統領(当時)は2017年の就任直後にFBI長官を任期途中で解任しているし、2020年の大統領選では再選すれば3期目を目指して出馬すると表明している。大統領に関する設定はむしろ現実そのものだ。また、共和党(保守、次期大統領選ではトランプ氏を選出)が強いテキサス州と、民主党(リベラル、次期大統領選ではハリス氏を選出)が強いカリフォルニア州が同盟を組んでいるというのも、今の政治状況から見ると想像できないが、独裁者からアメリカを守るという目的を双方が共有する、という状況には一定のリアリティがある。

こうした状況の中、ニューヨークに滞在していたフォトグラファーのリー、記者のジョエル、新米フォトグラファーのジェシカ、老ジャーナリスト、サミーの4人で、大統領に単独インタビューを行うため、西部勢力によって陥落寸前と言われているワシントンD.Cにあるホワイトハウスへと向かう。

ニューヨーク=ワシントン間は直線距離で約300kmだが、戦場を避けるため内陸部を迂回する。1,500kmを車で移動する長旅。ロードムービーが始まる。

黒煙が上がる街角。撃墜されたヘリコプター。破壊された無数の自動車。軍隊が設置している検問。放棄された一軒家。ミサイルが飛び交う夜空。大きな荷物を背負って徒歩で移動する子連れの家族。銃を構えて対応するガソリンスタンドの定員。野球場に設置されている避難民のキャンプ。内戦に干渉しない集落。何事もないように営業している服飾店。過ぎていく風景はどれもみな痛々しい。

なぜ内戦が起きているのか、内戦に至った経緯や戦況について具体的な情報は提示されず、わからないまま話は進んでいく。しかし、作中のあるエピソードを通じて、その要因が示される。

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S H A R E
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1984年生まれ。兼業主夫。小学校と保育園に行かない2人の息子と暮らしながら、個人事業主として「法人向け業務支援」と「個人向け生活支援」という2つの事業をやってます。誰か仕事をください!