女の逆襲
若き日の銀を演じた恒松祐里の存在なしには今シーズンは語れない。妖艶さの中に確かにある底知れない狂気を魅せている。佇まいや声のトーン、笑い方一つとっても、危うく美しく、目の奥に宿る迫力に、圧倒されっぱなしだった。
銀からはじまった供花村の悍ましい人喰いの呪縛。その身を使って狡猾に生き抜き、最後には息子の白銀に喰われて、いや、喰わせて死ぬ。という、悲しくも銀らしい終わりの迎え方だ。
銀と同様に、女の執念・恨みを抱えた登場人物が、山本奈衣瑠演じる後藤久露恵だ。一度は村から逃げ出したが、中島歩演じる後藤理に見つかって連れ戻される。計算高く、自分の保身を第一に考えるが故、再び逃げ出すために、恵介の子を孕っている狩野すみれを利用することに躊躇はなかった。
理に対して恨みを抱えていた久露恵だが、ついに理を殺すことに成功する。殺した後も、何度も蹴りを入れ恨み言をぶつける姿には、蔑まれた女の怒りが爆発している。今シーズンのハイライトの一つといえるだろう。その後、警察から逃れるために橋から川へ飛び込み、泳いで逃げていく。そんなたくましい姿も印象的だ。
シーズン1と2を通して
シーズン1は、なんの変哲もない田舎が「人喰い村」だった…というスリルと驚きに満ちた展開。そして、「誠実で真面目な警官像」とかけ離れた、主人公・大悟のチンピラのような口の悪さと暴力性。容赦なく、自分の正義をふりかざす大悟の潔さと危なっかしさに、不思議と惹きつけられる面白みがあった。
後藤家対大悟率いる警察という構図ではじまったシーズン2では、大きな驚きや興奮は少なかったのが正直な印象だ。しかし、“あの人”の正体に迫る過去の回想で見せた銀の苦悩と狂気の物語には、大いに引き込まれるものがあり、次世代のために恵介が落とし前をつける幕引きは、完結編として収まりが良かったといえる。
シーズン1のような暴力性の孕む展開を期待する方にとっては、やや物足りなさを感じるかもしれない。ちなみに、原作とは終盤の展開が異なるそう。シーズン1のカタルシスを追体験したい方は、原作を読んでみるのもいいかもしれない。
──
■ガンニバル(S2)
監督:片山慎三、佐野隆英、大庭功睦
原作:二宮正明『ガンニバル』
脚本:大江崇允、廣原暁
プロデューサー:山本晃久、半田健
アソシエイトプロデューサー:山本礼二
出演:柳楽優弥、笠松将、吉岡里帆、高杉真宙、北香那、杉田雷麟、山下リオ、田中俊介、志水心音、 吉原光夫、中島歩、岩瀬亮、松浦祐也、永田崇人、ジン・デヨン、六角精児、 恒松祐里、倉悠貴、福島リラ、谷中敦、テイ龍進、豊原功補、 矢柴俊博、河井⻘葉、赤堀雅秋、二階堂智、大鷹明良、利重剛、中村梅雀、 橋爪功、倍賞美津子ほか
配給:Disney+
公式サイト:https://disneyplus.disney.co.jp/program/gannibal