【ガンニバル(S2)】女の執念と逆襲

osanai ガンニバル(S2)

「この村では、人が喰われるらしい」という噂がたつ、街から遠く離れた山間の“供花村くげむら”。家族と共に駐在所の勤務員として赴任した阿川大悟はその秘密に迫ろうとするが、村の秘密を守ろうとする後藤家の抵抗に遭ってしまう──。
二宮正明の原作を、片山慎三が映像化。シーズン2となる本作では、供花村を実質的に支配する後藤家の過去に迫り、狂気のルーツを辿っていく。主演はシーズン1に続き、柳楽優弥が務めている。

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「お前も食え」“あの人”に襲われた大悟(柳楽優弥)が目を覚ますとそこには、肉塊を手に、顔を血に染めた恵介(笠松将)がいた。
その後ろでは、松明が炊かれる儀式の中で、大悟の娘・ましろに喰らい付こうとする“あの人”の姿が。
恵介は続けて言う。「お前の言う通りじゃ。わしらは人を……」。

衝撃のラストから約2年。待望の続編にして最終章であるシーズン2が2025年3月19日に配信開始した。監督はシーズン1に引き続き「岬の兄妹」「さがす」の片山慎三。脚本を第94回アカデミー国際長編映画賞に輝いた「ドライブ・マイ・カー」の大江崇允が手がける。

シーズン2では、時代を遡る形で供花村の狂気が中心に描かれている。人間同士の醜い争いを軸に、その収束に向けて鍵となる子どもたち・次世代が、いかに負の遺産を乗り越えていくかが一つのテーマとなっている。シーズン2の見どころについてレビューしていく。

あの人の運命

今シーズンの焦点の一つは、“あの人”の出自だ。なぜ超人的な身体能力を持ち、人を喰うのか?どのようにして生まれたのか?第5話でついに、その真相が明かされた。

来乃神神社くるのかみの宮司である正宗(橋爪功)は、今から70年前に何があったのか語り始める。

1949年、供花村は当時の当主である後藤金次(豊原功補)の独裁的な支配に置かれ、村人たちは食糧難に苦しんでいた。妹の後藤銀(恒松祐里)は兄から日常的に性暴力を受け、村人からは「売女」と蔑まれながら暮らしていた。

父に連れられて村へやってきた青年時代の正宗(倉悠貴)は、銀の美貌に魅了される。銀はそんな正宗に目をつけ、いとも簡単に手玉にとり妊娠する。そして、2人で協力して供花村を乗っ取ろうと企てる。しかし、村人たちに憎まれていた銀は、「来乃神に捧げる」という名目で縛られて、山奥に打ち捨てられてしまう。

そんな銀を見つけたのは「カシハベ」という人喰い山賊の一族だった。銀は彼らに体を売り、共に恨みのある供花村への復讐をもくろみ、結託する。

1952年、人肉を食べて成長した銀の子ども「白銀しろがね」を連れて、銀とカシハベは、金次が治める供花村を制圧する。そして、飢えていた村人たちに、「生贄を捧げること」を条件に、食糧の確保を約束することで新たな供花村の当主になったのだった。

その後も、人間だけを食べ続けて成長した白銀は「狂い病」にかかり超人的な体を手に入れて“あの人”と言われる存在になっていった。

恐ろしい存在だった白銀の、哀れな生い立ちが明らかになったことで、見え方が少し変わってくる。そんな白銀は、息子である恵介の手によって最期を迎えることになった。恵介から猟銃で頭を撃ち抜かれたが、それでは死にきれず、自分で自分を喰らったことでようやく死に至ったのだ……。

死ぬ寸前に恵介に対して、「生きろ」と告げた白銀だったが、この言葉は銀が死ぬ直前に放ったものだった。手段を選ばずに生き延びろという親の強いメッセージがここで繋がる。

しかし、「銀と白銀」と「白銀と恵介」では、親子としての決断が決定的に違った。

銀は「白銀が生きていける場所を作る」ために供花村を乗っ取り人喰いを肯定したが、恵介は「白銀を殺すことで、村で生まれた子どもたちが真っ当に生きられるように」変革を起こす道を選んだのだ。

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S H A R E
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1988年長崎県出身。2011年関西大政策創造学部卒業。18年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを開催。「カランコエの花」「フランシス・ハ」などを上映。映画サイトCinemarcheにてコラム「山田あゆみのあしたも映画日和」連載。好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を見る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中。