3人目の子どもが生まれたばかりのマーロ。仕事に家事、育児に奔走していたが限界を迎え、夜だけのベビーシッターを雇うことに。マーロのもとを訪ねたのは、タリーという若い女性だった。
監督を務めたのは、「JUNO/ジュノ」、「マイレージ、マイライフ」のジェイソン・ライトマン。主人公マーロを演じたシャーリーズ・セロンは、プロデューサーにも名を連ねている。
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少しでいいから休みたい。
息子たちが乳幼児の頃、毎日毎日そう思っていた。夜泣き、頻回の授乳、長男の登校支援と平行しての出産、次男の授乳、また夜泣き。長男は特に眠らない子どもで、産後1年以上夜泣きが続いた。眠りたい──ただそれだけの願いが叶わないと、人間は除々に壊れていく。
映画「タリーと私の秘密の時間」をはじめて観たのは、次男が小学校に上がる前であった。作品の主人公は、40代で3人目の子どもを出産したマーロ。長男のジョナはいわゆる“育てにくい”子どもで、臨月のお腹を抱えたマーロは、ジョナとのコミュニケーションにおいてたびたび悩まされる。妊娠中はただでさえ体が思うように動かせず、あちこちに痛みが出る上、不眠になりやすい。ストレスフルな状態の中、すでにいる子どもたちに向き合うマーロの姿は、かつて私自身が通ってきた子育ての道のりと瓜二つであった。
出産を控えたある日、マーロは家族と共に兄夫婦の家にディナーに出かける。そこで兄から「出産祝いに」とナイトシッター(夜間専門のベビーシッター)を紹介されるが、当初は「他人に子どもを預けるなんて」と難色を示していた。だが、第3子のミアを出産して間もなく、心身の限界を感じたマーロは、ベビーシッターに頼ることを決意する。
シッターとしてやってきたのは、タリーと名乗る20代の女性だった。若々しいスタイルと服装が目を引くタリーは、物怖じしない性格でマーロに対してフランクに接する。風変わりな雰囲気をまとうタリーにマーロは一瞬困惑するも、育児と家事を完璧にこなす彼女に深い信頼を寄せていく。
タリーのエネルギーは凄まじく、何年も磨いていなかった床を一晩でピカピカにしたかと思えば、翌日には子どもたちのためにカップケーキを焼き、朝が来る前に忽然と消える。生まれたばかりの赤ん坊の子守りをしながら、これだけの家事ができる人はそういない。
タリーが来てからというもの、マーロは目に見えて元気になった。
「久しぶりに熟睡できたわ」
夫にそう話すマーロの表情は、蓄積する疲労に苛まれ、ぼんやりと椅子に座っていたときのそれとはまるで別人だった。
タリーが担ってくれる夜間の育児と家事のおかげで、マーロは徐々に心身の平静を取り戻していく。体を引き締めるためにジョギングをはじめ、手料理を作り、娘のサラ、息子のジョナとも余裕を持って接する。「プロの手を借りれば育児に余裕が生まれる」ことを体現している作品なのだと、途中まではそう思っていた。しかし、そんな私の予想は後半で見事に覆される。