他にジャンルで特徴的なのは良質なドキュメンタリー作品が下半期に多かったこと。
最大の話題は、「どうすればよかったか?」(12月7日公開)。極小規模な公開というのもあるが連日チケットが完売でなかなか観ることができないほどの人気で、劇場が拡大してようやく鑑賞できる機会ができてきたほど。統合失調症の姉と両親を弟である監督が撮り続けた私的映像であり、誰もが関係する家族の話。
「14歳の栞」で、ある中学生のクラスの生徒たちの素直な気持ちを丁寧に見事に映し取った竹林監督による「大きな家」(12月6日公開)も本作では舞台を児童養護施設にして様々な事情で親元から離れている子供たちに丁寧に寄り添った。前作に続き対象となった子供たちのプライベートを考慮して劇場以外のソフト化や配信を一切しないという配慮やスタンスがとても今っぽい。齊藤工がプロデューサーを務めていて映画には一切出てこず裏方に徹している。
和歌山毒物カレー事件、あれは実は冤罪ではなかったのか、それを題材にしたのが「マミー」(8月3日公開)。林眞須美容疑者の遺族らの証言を元にその実像を追っていくと、次々と知らなかった事実が出てきて事件の知らなかった全体像が浮かび上がってくる。潔白の証明を訴える作品は、時代の流れか最近増えています。
「アイアム・ア・コメディアン」(7月6日公開)は、芸能界から突如消えアメリカでコメディアンとしての場を求めたウーマンラッシュアワー村本大輔に密着したドキュメンタリー。政治ネタなどの持ち味があるも日本のテレビではタブーが多く、やがてその活躍の舞台を劇場へ移すもコロナが訪れ、政治こそがネタになるアメリカを彼が次の舞台として目指した過程がよく分かる内容。
前述の「HAPPYEND」の空音央が父である坂本龍一の最後のソロコンサートをモノクロ映像で捉えた「Ryuichi Sakamoto / Opus」(5月10日公開)、信頼できるスタッフだけで作り上げたという作品。
海外ではドキュメンタリー映画の巨匠であるフレデリック・ワイズマンの「至福のレストラン 三つ星トロワグロ」(8月23日公開)、ミシュラン三つ星の高級レストランだがその内情は家族経営で昔ながらのスタイル。相変わらず何の説明もナレーションもないが、ずっと見ていられる240分。
次のジャンルとしてはここ最近ブームになってきているリバイバル上映。下半期においても「インターステラー」、「リトルダンサー」、「シュリ」、「ターミネーター2」、「ラブ・アクチュアリー」、「イル・ポスティーノ」、「バグダッド・カフェ」、「レ・ミゼラブル」、「ルパン三世 カリオストロの城」などなど、過去の名作が4K映像などで続々と上映されています。
最後に、今年のお正月映画となる大型の作品が年末に続々と公開。
12月6日公開:「劇場版 ドクターX」、「モアナと伝説の海2」
12月13日公開:「はたらく細胞」、「映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」、「クレイヴン・ザ・ハンター」
12月20日公開:「聖☆おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団」、「【推しの子】-The Final Act- 」、「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」、「ライオン・キング:ムファサ」
12月27日公開:「ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い」、「ソニック×シャドウ TOKYO MISSION」
12月30日公開:「グランメゾン・パリ」
というラインナップで大作が続きますが、アニメを抜くとその大半が邦画というのがわかります。
昨今は洋画が低迷していて、邦画と洋画の割合は7:3となっています。そしてその傾向はさらに広がりそうな動きを見せているので、より邦画が観られるようになりそうです。
ということで下半期の映画の流れをいくつかのくくりにして傾向を挙げてみました。
とはいえ映画はそれぞれが感じたもので良いので、何か気になるものがあればチェックしてもらえればと思います。映画選びの参考にしていただけると嬉しいです。