日本映画界の若き才能の芽吹き

osanai 2024年下半期振り返り 渡辺順也

『オッペンハイマー』はじめアカデミー賞の盛り上がりがあった2024年上半期。そして、下半期も見応えの多い作品が多かった。

いくつか大きくカテゴリーを分けて下半期の作品の流れを見ていきたいと思います。

トピックスとして挙げられるのは、まず「侍タイムスリッパー」(8月17日公開)でしょう。都内1館上映からスタートし口コミが口コミを呼び話題となり100館以上に拡大公開となり”第二のカメ止め”と言われるほどに。現代にタイムスリップしてしまった侍が時代劇の斬られ役として馴染んでいくコメディで低予算ながら大ヒットに。内容の面白さもありながら映画愛、時代劇愛に溢れていたことも好印象のポイントでした。

そして、アニメからは「ルックバック」(6月28日公開)、藤本タツキの短編マンガをアニメ化してこちらも大ヒット。中学で出会った漫画家を目指す二人の出会いと友情を躍動感ある感動作に仕上げ、58分という尺も現代人には見やすいフォーマットで観に行くまでのハードルを下げていた効果もあったと感じられます。

そして続けて取り上げたいのが、日本映画の若手監督の躍進が多かったこと。
とにかく日本映画の良作が多かったです。

今年のカンヌ国際映画祭に出品されていたのが、山中遥子監督の「ナミビアの砂漠」(9月6日公開)、河合優実演じるわがままで流されやすいカナの姿が話題に。そして奥山大史監督で池松壮亮出演の「ぼくのお日さま」(9月13日公開)は、スケートを習う小学生二人とそのコーチを優しい映像で包んだ作品。
低予算ながら女子高生が本格アクションをしたことで話題になった「ベイビーわるきゅーれ」。「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」(9月27日公開)は早くもシリーズ第三弾。

上記に挙げた3作品の監督は、なんとまだ20代です。

坂本龍一の息子でもある空音央(そらねお)監督の「HAPPYEND」(10月4日公開)は、親友同士の高校生男子が卒業を控えて考え方や距離感が変化していく青春ストーリーで、これが長編デビュー作とは思えない。
『若き見知らぬものたち』(10月11日公開)は、「佐々木、イン、マイマイン」の内山拓也監督、ノーフューチャーな若者のヒリヒリ感を描き、「SUPER HAPPY FOREVER」(9月27日公開)の五十嵐耕平監督は、男女の出会いと別れを見事な構成で描き話題に。

それと、写真家でもある奥山由之監督の「アット・ザ・ベンチ」(11月15日公開)、こちらは短編集という自主映画ながら監督個人のつながりで、広瀬すず、仲野太賀、岸井ゆきの、今田美桜、草彅剛、吉岡里帆らのキャストに、ドラマ「silent」の生方美久、ダウ90000の蓮見翔らが脚本という豪華すぎる布陣の上に限定上映となっています。

という才能あふれる若手監督の新作が次々と公開されたのも、2024年下半期の特徴のひとつでした。

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移動映画館キノ・イグルー。全国で映画イベントいろいろ。年間300本くらい映画やドラマを観てます。インスタやnoteでも映画ネタを発信中。