オキナワより愛をこめて
2024年心に残った作品のふたつ目に、ドキュメンタリー映画「オキナワより愛をこめて」を紹介したい。
沖縄で米兵と現地の人々を撮影し続けた写真家の石川真生さんを追った、ドキュメンタリー映画だ。彼女のパワフルでピュアな人間性が余すことなく映し出された一作となっている。
1971年沖縄返還を巡って起きたストライキで一人の警察官が亡くなった。沖縄の人間同士のぶつかり合いから起きた悲劇をきっかけに、石川さんは1975年にコザ照屋にて黒人向けバーで働きはじめる。そこで米兵らの暮らしと、ともに暮らす沖縄の女性たちの生活を日記のように写真に収めたのが、石川さんの写真家としてのはじまりだった。
当時の沖縄では敗戦後の風潮から、アメリカ人と並んで歩くだけで差別や偏見の目を向けられ、売春婦だと揶揄されたという。だが、石川さんを含め、米兵を愛した沖縄の女性たちは逞しく、気高かった。
複雑な歴史背景を背負うこととなった沖縄の地で「米兵たちが好き、アメリカの文化が好きだ」と、好きな場所で好きな人と過ごすことを選んだ沖縄の女性たち。その揺るぎない想いとありのままの生き様を収めた写真の数々に、私はスクリーン越しに釘付けになってしまった。
魂が宿った写真をもとに当時と今を見つめ、そこにあったのは「愛だった」と思いの丈を語る石川さんの比類ないエネルギーにも惹きこまれる。監督を務めたのは、ニューヨークを拠点に活動する砂入博史氏。彼の鮮烈でアーティスティックな編集・演出が相まって、今年出会った中でも、忘れられない一作となった。
ちなみに、私事になるのだが、訳あって来年から夫の地元である沖縄へ移り住むこととなった。『オキナワから愛を込めて』を初めて観たときには、まだ決まっていなかった移住計画なのだが、今となっては今年この映画と出会えたことにも意味があるような気がしている。私も石川さんのように、自分の信じる道を、沖縄の地で貫いて生きていきたい。