事故が原因で全身麻痺になった富豪と、介護者として雇用された黒人青年の交流を描く物語。共通点がなくお互いは衝突を続けるが、やがて温かな友情を育んでいく。
監督・脚本を務めたのは、エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ。主人公のふたりをフランソワ・クリュゼ、オマール・シーが演じている。
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「人の目を見て話しましょう」
小学生の頃、担任の先生に言われた言葉だ。
交通ルールを守りましょう。
あいさつをしましょう。
はや寝はや起きをこころがけましょう。
数々の標語のような言葉のなかで、これが一番こころに残っている。
人の目を見て話しましょう。
それが、とっても難しい。
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担任の池田先生はかなりユニークというか、ちょっと破天荒な先生だった。
いつもジャンパーを着ていて、クラスルームにご自身の漫画を置いて生徒と貸し借りをしたり、みんなが授業に飽きてくると趣味の釣りの話をはじめて盛り上がりすぎてチャイムが鳴っちゃったり。今だとちょっとヒヤヒヤするような、でも好きな生徒には好かれるタイプのはじめての大人の友だちのような先生。
わたしも、お子様ランチが大好物のパイロットの漫画を借りて読んだ。タイトルはなんだっけ?まったく思い出せないけれど、学校で漫画を読むのがなんだかすごくワクワクしたのを覚えている。
そんなおもしろの池田先生だけど、ここぞというとき、大事なことを伝えるタイミングにはまっすぐ目を見て話す人だった。
移動教室でルートを外れて勝手な行動をしたとき。友達と言い合いになったとき。伝えたいことが言葉にできなくて、わかってもらえず泣いてしまったとき。
だいたいは怒られるときが多かったけど、それは危険なことだったり、芯の部分でいけないことだったり、自分や誰かの心の問題だったり。今思えばそういう「ここぞ」というときだったんだと思う。
人の目を見て話す。大切なことだ。
でも、先生。
それが今、すごく難しいんです。