非常に印象に残ったシーンだった。
戦争を経て、新しく日本国憲法が制定された。その第十四条で「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定された。
ただ私たちは、本当に差別されない世の中をつくれているのだろうか。寅子が激しく怒ったあとに、少しずつ、見えていない差別に慣れてしまっているのではないだろうか。
女の子は勉強しなくてもいい、可愛くおとなしく家庭にいればいい。こういった時代錯誤な発言を、本当に聞いたことはないといえるか。
女性の就職活動は結婚するまでと思われていたことだって、結婚のしやすさを見据えて就職先を選んだ友人だって。
そして、同性を好きな友人が結婚できないことだって、学歴を理由に落とされる就職活動だって、お金を理由に学べないことがあるのだって。
自分がなりたい自分ではなく、社会的な立場に沿うことで、自分たちの生き方を狭めたりしていないか。誰かが声をあげていないことを、当たり前にしていないか。寅子の世代の人々がつくってきた社会変化を、当たり前のように享受してしまっていないか。
変わっていないこと。それを私たちは、当たり前にしちゃダメだ。「はて?」と問いを立てて行かないとダメだ。
数十年前の日本ではるさんが揶揄した「地獄」は、数十年経った今も変わっていない。
「虎に翼」は、私たちに強い風を巻き起こした。きっとこの風に誘われた仲間たちと共に、少しでも楽しい地獄にしていけるに違いない。さて、どんな社会を、未来を、みんなでつくっていけるだろうか。
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■虎に翼
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉
制作統括:尾崎裕和
作:吉田恵里香
美術統括:日髙一平
美術:川名隆、小泉章一、平岡未帆、荻野紗
法律考証:村上一博
裁判所考証:荒井史男
風俗考証:天野隆子
旧字考証:三浦直人
医事考証:冨田泰彦
制服考証:刑部芳則
朝鮮学生考証:崔誠姫
ジェンダー・セクシュアリティ考証:前川直哉
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
語り:尾野真千子
出演:伊藤沙莉、岡田将生、森田望智、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、戸塚純貴、平埜生成、三山凌輝、沢村一樹、松山ケンイチほか
放送:NHK
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/toranitsubasa/ts/LG372WKPVV/