海外で亡くなった人の遺体を家族の元へ届けるために奮闘する国際霊柩送還士。エンジェルハース社長の伊沢は、社員たちと共に、様々な事情で亡くなった遺体と向き合っていく。
佐々涼子の原作ノンフィクションを、堀切園健太郎が映像化。主人公の伊沢を米倉涼子、エンジェルハースの新入社員・凛子を松本穂香が演じている。
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飛行機に乗るときはできるだけ窓際の席を予約する。空から地上の街並みや地形、息をのむくらい美しい夜明けや雲海を眺めるのが無性に好きなのだ。子どもの頃から海外への憧れが強く、それは大人になった今も変わっていない。私以外の家族は誰一人パスポートを持っておらず、海外に行ったこともない。私がたびたび海外に行くときの家族、特に父の心配ぶりといったらなかった。
「ええ?季世はまたそんな遠くに行くのかぁ……危ないんじゃないのか?ほんと気をつけて帰ってくるんだよ」
海外に行くと言うと毎回そんな言葉が返ってきた。それでも私は飛行機に乗って異国の地へ行くことをやめられない。空港へ向かうときの高揚感。フライト中の「どこでもない場所」に漂う感覚。現地で出会う発見の数々。心地よい疲労と共に乗り込む帰りの飛行機。帰りを待ってくれている人たち。居心地の良い我が家。愛してやまないそれらはすべて当然だと思っていた。自分がどこかで骸となり、物言わぬ存在として飛行機に乗ることなど、一度も考えたことがなかった。
だが、人はいつか死ぬ。予期せずして、時に異国で命を失うこともある。ドラマ「エンジェルフライト」では、異国で亡くなった遺体を祖国へ送り届ける「国際霊柩送還士」という職業にスポットライトを当てている。国際霊柩送還の専門会社エンジェルハースで働く人々と、彼らが仕事で「出会う」遺体、そして遺族の想いを描いた物語だ。エンジェルハースの剛腕社長・伊沢那美を演じる米倉涼子は、奇しくも原作を執筆したノンフィクション作家・佐々涼子と同じ名前だ。
物語はエンジェルハースの新入社員・凛子の視点で進む。凛子をはじめ、エンジェルハースの社員たちが日々接するのは、様々な理由で異国で亡くなり骸となった人々。そして、突然の訃報に戸惑い、伝えられなかった想いを胸に悲しみ、怒り、途方にくれる遺族たちだ。親と絶縁状態でフィリピンで亡くなった男性とその両親。某国で起きたテロで損壊の激しい状態で亡骸となった人々とその家族。「好きなアイドルのコンサートに行っておいで」と子供たちからのプレゼントで訪れた韓国で亡くなった女性。日本で亡くなったベトナム人実習生。遺された誰もが突然の彼/彼女らの死に戸惑う。