【愛に乱暴】悪夢から目覚めるとき

osanai 愛に乱暴

結婚して8年の桃子は、義母や夫の態度にストレスをわずかに感じる日々を送っていた。いつしか桃子の周囲で、ゴミ捨て場のボヤ騒ぎや愛猫の失踪など、不審な出来事が立て続けに発生する──。
吉田修一の原作を、「さんかく窓の外側は夜」の森ガキ侑大が映画化。江口のりこが主人公・桃子を演じている。

──

私は、或る夢を繰り返し見る。年に数回、もう何年にも渡る。

夢の中の私は、独身で子どもはいない。
恋人はいないか、今まさに失おうとしている。

ことごとく他者と心が通わぬ、果てしないひとり相撲。
深い縦穴の底、冷たい土を素手で掘る。爪が割れる。私はその先の人生に絶望している。

しかし、私は不思議に思い始める。
おかしいぞ、私は何かを忘れている。私には何か、とても大切なものがあったはず。

それを思い出すと同時に、私は目覚め、隣で眠る夫の存在を確かめる。
子ども部屋では、8歳の誕生日を迎えたばかりの息子が寝息を立てているはずだ。

やがて、安堵が再び私を眠りに導く。

10年前、私は悪夢そのままの現実の渦にいた。
その時はまだ夫と知り合っていなかったし、息子は影も形もなかった。

10年前の私と、悪夢の中の私。
似ているけれど違うのは、夢の中の私は10歳年を取っているということ。
先月見た同じ夢の中で、私は、2024年の現実の通り49歳を迎えていた。

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S H A R E
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スタートアップや上場企業の経営アドバイザー。元クラウドワークス取締役。
文学部中退、法学部卒。これまでのキャリアは左脳優位。目下、右脳を解放中。
戯作三昧、おしゃべり三昧。Podcastをやってます。